2013 Fiscal Year Research-status Report
アメリカカンザイシロアリは乾燥した木材内部だけで何故生きられるのか?
Project/Area Number |
25660144
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
大村 和香子 独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, 主任研究員 (00343806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
所 雅彦 独立行政法人森林総合研究所, 森林昆虫研究領域, 室長 (70343796)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 保存・文化財 / 昆虫/動物 / シロアリ |
Research Abstract |
外来種アメリカカンザイシロアリ被害対策は、本種が木材の内部に穿孔して生息していることから、外見からは存在箇所がわかりにくいため、駆除処理を何度も何年にも亘って繰り返さなくては駆除できないのが現状である。居住空間での薬剤による駆除作業が必要なことから、居住者への影響を考慮して薬剤を使わない駆除対策を確立していく必要がある。本研究は本年度、新たに(公社)日本木材保存協会規格に採用されたアメリカカンザイシロアリを供試シロアリとした木材保存剤の評価試験方法を確立する中で着想にいたったものであり、本種の乾燥耐性メカニズムを解明した上で駆除対策へ応用することを目的としている。 アメリカカンザイシロアリを液状の水分の供給を行わず、スギ辺材気乾材を餌として密閉容器中で長期間飼育し、その雰囲気中の温湿度と、スギ辺材のみ投入した試験区ならびに外気の温湿度との関係を比較することで本種の調湿能評価を試みた。アメリカカンザイシロアリ試験区では、スギ辺材のみの試験区と比較して高湿度に保たれ、さらに温湿度変化も少ない傾向が認められ、アメリカカンザイシロアリが調湿能を有することが示唆された。さらにスギ辺材に強制的に営巣させた材料を用いて、孔道周辺部、アメリカカンザイシロアリ本体、スギ辺材の各n-hexane抽出物をGCMS分析・比較したところ、アメリカカンザイシロアリのn-hexane抽出物からは体表ワックス由来成分ピークが複数検出された。孔道周辺部ならびにスギ辺材のn-hexane抽出物の比較から、孔道周辺部抽出物には体表ワックス成分が確認された。このことから体表ワックス成分が孔道周辺部に付着しており、ワックス成分の効果で営巣環境が適切な湿度に保たれていると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
材表面の化学組成中に体表ワックスが存在するとした当方の仮説に結果が合致し、さらに次年度の予備試験となる営巣環境の温湿度解析の試行が予定どおり進捗したことから、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
アメリカカンザイを人為的に営巣させたスギ辺材試験体を用いて、飼育環境の温湿度を強制的に変動させ、体表ワックスの分泌量や組成ならびに水分代謝の変化を追跡する。高性能マイクロカロリーメーターを用いて個体からの微小発熱量の定量を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高性能マイクロカロリーメーターは非常に高額な製品のため、25年度には、機器分析展やセミナーに参加して微小昆虫の体表からの発熱量測定が可能な高性能マイクロカロリーメーターの機種選定に時間を要した。最終的にリースでの使用が可能とのことから、今年度リースにより実験を進める。 高性能マイクロカロリーメーターをリースにより使用し、複数のシロアリ種の体表からの発熱量測定を実施・比較する。
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