2014 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカカンザイシロアリは乾燥した木材内部だけで何故生きられるのか?
Project/Area Number |
25660144
|
Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
大村 和香子 独立行政法人森林総合研究所, 木材改質研究領域, 室長 (00343806)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
所 雅彦 独立行政法人森林総合研究所, 森林昆虫研究領域, 室長 (70343796)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 保存・文化財 / 昆虫/動物 / シロアリ |
Outline of Annual Research Achievements |
木材、木質材料を使用した住宅・公共建築物等において、強度低下を引き起こす木材腐朽菌やシロアリ等の木材害虫対策は必須である。乾燥した木材中に液状の水分の供給なく生存可能な外来種アメリカカンザイシロアリの被害対策は、本種が木材の内部に穿孔して生息していることから、外見からは存在箇所がわかりにくいため、駆除処理を何度も何年にも亘って繰り返さなくては駆除できないのが現状である。本種の生態的特徴である乾燥耐性メカニズムの解明は、新たな駆除対策の確立に資するものである。 本研究では、アメリカカンザイシロアリを人為的に営巣させた空間に、高感度微小温湿度センサを利用して営巣環境の温湿度の長期モニタリングを実施した。その結果、外気温が高いほど代謝が高まり、体表からの水分蒸散量が多くなることが明らかとなった。営巣箇所の観察から、体表ワックスのほか、営巣箇所の表面性状も営巣環境の空間的保湿に寄与する可能性が示唆された。本種の環境適応能に関しては、マイクロカロリーメータによりアメリカカンザイシロアリ体表からの発熱量を測定した結果、43-50℃に小さな吸熱ピークが存在したことから、43℃程度まで高温環境に耐えることが推察された。さらに温湿度を変動させた場合の代謝活性の変化を検討した結果、高湿度になるほど生存率、摂食量ともに増加するだけでなく、10℃でも摂食行動を継続することがわかり、水分欲求の高い木材加害シロアリ種であるイエシロアリと比較して、高い乾燥耐性を有するだけでなく、厳しい生息環境でも代謝を抑えて生存可能な種であることが明らかとなった。
|