2013 Fiscal Year Research-status Report
深海底に残るピロリ菌誕生過程の足跡:祖先型微生物と大型生物の網羅的相互作用解明
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25660146
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中川 聡 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (70435832)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 深海底熱水活動域 / 細胞外共生 / 環境応答 / マルチオミックス |
Research Abstract |
平成25年度は、深海底熱水活動域に特異な甲殻類とその細胞外共生微生物のそれぞれにおいて、次世代シーケンサーを用いた発現遺伝子の網羅解析(トランスクリプトーム解析)を実施する予定であった。本解析は平成25年度の航海で採取する試料を用いて実施する予定であったが、航海の時期が2014年1月となったため、予備的に2011年9月に調整しマイナス80度で保存していた生物試料を用いて、一連の作業すなわち各部位からトータルRNAを抽出し、ポリAを用いてホスト生物と共生微生物由来のRNAを分画、さらに磁気ビーズ法によりrRNAをハイブリダイズ・除去した。上記の航海で採取した複数の個体を用いて、複数回にわたりホスト生物および共生微生物のトータルRNAを調整したが、ほとんどの試料においてRNAの断片化(おそらく保存中)が高度に進んでおり、次世代シーケンサーによる解析に必要なクオリティーに達していないことが明らかとなった。 そこで、トランスクリプトーム解析は2014年1月の航海で調整した新鮮な試料を用いて迅速に行うべきと判断し、現在解析用の試料を調整しているところである。また平成25年度は、上記保存試料から解析に足るクオリティーのゲノムDNAを得ることはできたため、様々な遺伝子の完全長配列を取得することを目的として、次世代シーケンサーを用いて共生微生物のゲノムDNAを解析することに成功した。なお、以上に関連する成果の一部は複数の学会や国際誌上で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度実施予定であったトランスクリプトーム解析において、良質なmRNAを調整することが困難であったが、2014年1月の航海で新鮮な試料を調整することに成功している。また深海からの試料採取に際してRNAの分解を完全に避けることは困難なため、平成25年度に取得することに成功したゲノムDNAの解析データは今後のトランスクリプトーム解析に基盤的役割を果たすと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、2014年1月の航海で調整した新鮮な試料を用いて、次世代シーケンサーを用いた発現遺伝子の網羅解析(トランスクリプトーム解析)を実施する。得られた配列を用いて、データベース上に公開されている甲殻類のESTデータを含めてカテゴリー分類と相同性検索に基づく機能アノテーションを行なう。各々の船上飼育個体に由来するライブラリでの出現頻度を比較するのみでなく、各生物における発現様式に有意な相関が見られるものを選択することにより、各環境条件における生物間相互作用に特異的な発現様式を示す遺伝子群を同定することが可能となる。加えて、平成26年度は、代謝物質全同定を1試料に限定して行う。本解析には種々の条件検討が不可欠なためである。特に各種溶媒を組み合わせることにより、代謝物質の物理化学特性に影響されない高効率な全代謝物質の解析法を確立する必要がある。そこで、本年度はまず我々が既に分離・ゲノム解析を行った培養株群を用いて、全代謝物質の解析法を確立する。細胞をメタノール/クロロホルム/水に分散し、限外ろ過により高分子を除去した後CE-TOFMSに供する。同定には一般的な主要代謝物質のみでなく、平成25年度に得られた代謝物質情報をコンパイルし、それらの精密質量と移動時間が登録されたライブラリを用いる。各代謝物質の増減を見るのみでなく、同位体情報を加味し生物間の増減に相関が見られるものを選択することにより、生物間相互作用に特異的な代謝・接着因子・生物間を行き来する代謝物質を同定することが可能となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、2011年度に調整しマイナス80度で保存していた生物試料を用いて、トランスクリプトーム解析を試みた。しかしながら、用いたほとんどの試料において、おそらく保存中に生じたと考えられるRNAの断片化が高度に進んでおり、次世代シーケンサーによる解析を行うことが不可能であったためである。なお、上記保存試料から解析に足るクオリティーのゲノムDNAを得ることはできたため、共生微生物のゲノムDNAの解析には成功しており、次年度使用額はわずかである。 独立行政法人海洋研究開発機構が2014年1月に実施した研究調査航海に参加し、トランスクリプトーム解析用の新鮮な試料を得ることに成功している。本試料を用いて、平成26年度にトランスクリプトーム解析を実施する予定である。
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Research Products
(4 results)