2013 Fiscal Year Research-status Report
激変した母川環境をフィールドとしたサケ母川回帰の行動生理学的解析
Project/Area Number |
25660153
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野畑 重教 東京大学, 大気海洋研究所, 研究員 (00526890)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シロサケ / 母川回帰 / バイオテレメトリー |
Research Abstract |
シロサケの遡上行動と東日本大震災による大津波の影響を明らかにするために、岩手県の大槌湾に来遊したサケの遡上過程での追跡を行った。湾奥の7カ所に音波の受信器を設置後、湾央の定置網で捕獲されたサケの腹腔に音波発信器を装着し再放流した。受信結果から、放流した18尾のうち11尾が川に遡上し、7尾が湾口方面へと行った。大槌湾には3つの河川が注ぎいずれの河川にもサケは遡上するが、遡上した11尾のうち5尾は数時間から数日かけて複数の河口付近を行き来した後に遡上した(迷走後遡上型)。一方、6尾は数時間かけて迷走することなく遡上した。昨年度は震災を経験した個体が3年魚として来遊する年であったが、10月から翌1月にかけての調査では3年魚は捕獲されず、本行動研究で用いた個体にも3年魚は含まれていなかった。したがって、遡上行動と震災の影響がわかるのは来年以降となる。 湾での行動調査とともに、大槌川での行動調査を行った。その結果、真の母川である源水川(大槌川の支流)へと移動した個体は20尾中1尾であった。これは2012年度に実施した調査(約半数が源水川へ移動)とは異なる結果であった。この違いが変動の範囲内なのかどうかについては本年度以降の調査で明らかになる。また湾内での調査同様に、3年魚はいなかったため、遡上と震災の影響が明らかになるのは来年度以降である。 上記の行動様式と遺伝的な背景とに相関があるかを観るために、採取した鰓からDNAを抽出し系群解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度行った湾内で行動調査は初めての試みであったが、データの取得は良好で当初の目的を達成する上で十分に考察可能なものであり、受信器の設置位置は本研究を行うのに適したものであったと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は震災を経験した個体が4年魚となって来遊する。昨年度の調査から、4年魚の来遊は多くないと予想されるが、それを補うべく50尾以上の個体への発信器の装着を目指す。また、河川水への反応を脳波反応で調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
音波受信器を購入する予定であったが、昨年度に関しては既存のものを借用することができたため。 受信器の購入の再検討を行うとともに、実験精度を上げるために発信器の購入を当初の計画よりも増やす予定である。
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