2013 Fiscal Year Research-status Report
音響環境エンリッチメントがウナギの成熟に及ぼす影響の解明とその応用技術の開発
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25660158
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
香川 浩彦 宮崎大学, 農学部, 教授 (60169381)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水中音響環境 / ウナギ / 性成熟 / ストレス / 生殖内分泌 / 産卵 / 種苗生産 |
Research Abstract |
環境制御によるウナギの成熟促進技術の開発を目的として、環境因子のうち、これまで全く考慮されてこなかった飼育水槽内の音響環境がウナギの生殖内分泌系ホルモンやストレスホルモン(コーチゾル)の生成・動態に及ぼす影響を分子・遺伝子レベルで解析するとともに、これらの知見をもとに、水温環境制御を組み合わせることによりウナギの自然成熟・産卵を目指す。本年度は、水中音響環境測定装置の開発とそれを用いて天然の河川や海及び飼育水槽中の音の種類(音域、Hz)や大きさ(音圧、dB)を測定し、飼育環境下の音響特性を明らかにするとともに、静音環境(または、天然環境)を再現できる水槽を設計する。その結果、飼育水槽もしくはウナギの天然生息環境の音響環境を的確に測定できる測定装置及び水中音発生装置を作成することができた。この装置を用いてウナギを飼育している屋内プラスチック水槽(400L)の音響環境を測定したところ、ウナギが生息していると考えられる河口域の音響環境と比較して、周波数1000Hzまでの音域で音圧が高く、静寂な環境でないことが判明した。また、水族館や水産研究所で使用している大型水槽もウナギ屋内プラスチック水槽とほぼ同様な周波数と音圧を示した。さらに、ウナギ屋内プラスチック水槽の音響環境を生息域の静音環境に近づけるために、水槽の壁面をグラスウールと発泡スチロールで覆い、水槽や濾過器や冷却器などのそこに防振ゴムを取り付けることにより、騒音を軽減することに成功した。また、騒音源として、水中に入れているエアレーションからの音及び濾過器や冷却器からの音が排給水のパイプを通して水中に伝わることが考えられたので、今後これらを取り除くための水槽設計を行い、より静音な環境で飼育できる水槽を作成する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ウナギ飼育水槽の水中音響環境の特性を明らかにする目的で、ウナギの生息している河川や海の音響環境及び水族館等の大型水槽の音響環境を当初の予定通り調査することができた。さらに、静音環境の水槽を準備するために、新たに静音水槽の設計を行い、従来の水槽よりも静穏な水槽の設計に成功した。水中音響環境測定装置の開発や静音環境を維持する水槽の作成に時間を要したため、当初予定した水槽内でのウナギの行動に及ぼす音響環境の影響については現在実験中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度調査結果をもとに設計した静音水槽を使用して、次の様な研究を行う予定である。 ①種々の飼育音響環境が生殖内分泌系ホルモンやストレスホルモンに及ぼす影響解明:平成25年度の実験結果をもとに、3種類(静音、騒音、ヒーリング環境)の音響環境の水槽を準備し、それぞれの音響環境がウナギの視床下部-脳下垂体-生殖腺系ホルモン及びストレスホルモン(コーチゾル)の発現動態に及ぼす影響を調べる。②音響環境や水温制御による成熟・産卵促進の試み:平成26年度の研究結果をもとに、最も効果的であった飼育音響環境とこれまで申請者らが明らかにした成熟促進に最も効果がある飼育水温パターンを組み合わせた飼育環境で雌雄のウナギを飼育し、これらの環境が成熟・産卵促進に及ぼす影響について検討する。③成熟・産卵促進効果が認められた時の代替え実験:上述の実験で音響効果が認められなかった場合には、これまで申請者らが開発したホルモン投与方法(オスモティックポンプ)を用いて、雌にはサケ脳下垂体抽出液、雄にはヒト胎盤性生殖腺刺激ホルモン投与を行い、同上の飼育環境が人為的なホルモン投与による成熟・産卵誘導に及ぼす影響を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度行った水族館等の水槽の水中音響環境の測定に使用する予定の旅費が少なくすんだことや水中音響環境測定装置が当初予定していたよりも安価であったことによる。 新たに作成する静音水槽やホルモン動態測定に関わる薬品等に使用する予定である。
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