2015 Fiscal Year Research-status Report
音響環境エンリッチメントがウナギの成熟に及ぼす影響の解明とその応用技術の開発
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25660158
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
香川 浩彦 宮崎大学, 農学部, 教授 (60169381)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水中音響環境 / ニホンウナギ / 性成熟 / 生殖内分泌 / 産卵 / 種苗生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境制御によるウナギの成熟促進技術の開発を目的として、環境因子のうち、これまで全く考慮されなかった水槽飼育中の音響環境がウナギの成熟・産卵に及ぼす影響を、生殖内分泌系ホルモンやストレスホルモンの生成・動態を分子・遺伝子レベルで解析することにより明らかにする。平成25年度はウナギの生息域や飼育水槽内の音響環境をハイドロフォンと録音機を用いて測定した結果、生息域は静穏な環境であったが、飼育水槽内は種々の騒音があることが判明し、これが水槽内でのウナギの成熟に悪い影響を与えていると考えられた。そのため、平成26年度には、水槽内を静音な環境を維持できる水槽の設計を行い、自然の生息域に近い静穏な環境の飼育水槽を作成した。さらに、この水槽を用いて、静穏環境、騒音環境、および音楽環境で雌ウナギを2週間飼育したところ、実験群間で、雌ウナギの生殖線体指数や卵母細胞の細胞径に差は認められなかったが、成熟に係わる血中エストラジオールやテストステロン量が騒音環境で飼育したウナギに比較して、静穏環境やモーツアルトの楽曲を継続して流した水槽で飼育したウナギの方が、有意に高い値を示した。この結果、騒音環境や音響環境が雌ウナギの成熟に影響を及ぼす可能性が初めて示された。そこで、平成27年度は、同様の音響環境で、2ヶ月間雌ウナギを飼育した。その結果、静穏環境、騒音環境および音楽環境で飼育したウナギの生殖線体指数や卵母細胞の卵径は実験群間で差は認められなかった。現在、血中ステロイドホルモン量や視床下部-脳下垂体系ホルモンの動態について、検討を行っている。今後は、実験期間を成熟関連ホルモンが増加した2週間に設定し、再現実験を行うとともに、血中ステロイドホルモン量や視床下部-脳下垂体系のホルモン発現に及ぼす影響を調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、予定の実験を行ったが、その解析が遅れている。また、以前の結果とは異なる結果が得られたので、研究方針を変更して、前回と同様の実験を行い、再現性を確認することとした。このため、本来なら平成27年度で終了予定のところを、研究期間を1年間延長し、対応することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、遅れている解析を行うとともに、新たに、再現性を確認するための実験を行い、その解析を行う。具体的には①視床下部ホルモン及び脳下垂体ホルモンなどの遺伝子発現動態を明らかにする。②再現性を確認するため、静穏環境、音楽環境および騒音環境で、2週間飼育する実験を行い、卵巣の組織学的観察、血中ステロイドホルモン量、視床下部-脳下垂体系ホルモンの遺伝子発現動態を明らかにする。③以上の実験の解析が終了すれば、その結果をもとに、光周期や水温制御と音響環境を組み合わせた環境がウナギの初期成熟に及ぼす影響について検討する。
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Causes of Carryover |
最終年度に行う予定であった成熟に関わる遺伝子の解析が遅れたため、それにかかる費用が少なくてすみ、かつ当初予定していた研究発表の旅費を使用しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に行えなかった解析を行うとともに、静穏環境や音楽環境がウナギの成熟関連因子を活性化するという実験の再現性を確認するために、再度同様の実験を行い、解析を行う予定である。
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