2013 Fiscal Year Research-status Report
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25660161
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
荒井 克俊 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 教授 (00137902)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 貴史 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (10400003)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 顕微注射 / ICSI / 受精 / 倍数体 / モザイク / 雄性発生 / マイクロサテライト / フローサイトメトリー |
Research Abstract |
実験の成否を可視化するため、ドジョウ野生型系統を雌、ヒドジョウあるいはアルビノ(劣勢形質)系統を雄とした。接水2分後の囲卵腔がはっきりした時期の卵について、トリプシンと尿素を含むリンゲル液で卵膜を除去し、裸卵とした。対照群は通常の乾導法により受精し作成した。裸卵の動物極付近に、おおよそ精子が1、10、100、1000細胞となるように顕微注射を行った。また、裸卵に授精した強制多精群も作成した。 顕微注射群の受精率(2細胞期胚出現率)は87%と対照群(88%)と同様であったが、それらの孵化胚出現率は対照の77%に対し、多数精子を顕微注射した群で高かった(6%)。強制多精群では2%の率で胚が出現した。フローサイトメトリーにより、これら胚の倍数性を調べたところ、半数体が最も多く出現した(対照群はすべて二倍体)。このほか、半数体-異数体、半数体-二倍体、半数体-三倍体などのモザイク、二倍体、三倍体、四倍体、五倍体が見られた。観察した中で最高の倍数性は五倍体であった。 顕微注射と多精から生じた胚はほとんどが異常であったが、中には正常な外見を有する胚も生じた。また、顕微授精と強制多精から生じた異常胚のなかに、劣勢のアルビノ形質を示す胚が生じたことから、雄性発生が生じたことが示唆された。そこで、マイクロサテライトDNAマーカー3座(Mac24、Mac345、Mac449)について分析したところ、ほとんどの半数体が父親由来のアレルのみを持つ雄性発生胚であった。しかし、両親由来のアレルを含む、異なる精子に由来する半数体細胞をもつモザイク胚も認められた。正常でかつアルビノ形質を示す四倍体胚は雄性発生胚であった。以上の結果から、多数精子の顕微授精あるいは強制多精により、雄性発生が生じることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多数精子の顕微注射、裸卵への強制多精により、多くの胚が発生を開始するが、ほとんどの胚は孵化期以前に死亡する。しかし、最高で6%程度生じた胚の遺伝学的分析から、これらの一部は雄性発生胚であることを明らかにできた。これにより、多精より生じる胚が何者であるかを解明し、目的はおおむね達成できた。以上のことから、達成度を(2)と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
多数精子の顕微注射、裸卵への強制多精により、多様な倍数体胚、雄性発生胚が生じることを遺伝学的に確認できたが、顕微注射された精子の卵内での挙動の観察には至らなかった。今後は以上の発生のメカニズム解明にむけて、受精過程について、前核化の存否、中心体の位置と数、雌性核との位置関係等について細胞学的組織学的観察を行う必要がある。また、ドジョウ以外の魚種においても、同様の事象が起こるか否かについても、実験を進める必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費特に薬品類の節約により生じた金額 新年度からの魚類飼育のための飼料(物品費)に供する。
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