2014 Fiscal Year Research-status Report
サンゴの「個性」がストレス耐性の鍵?-ゲノム科学による解明-
Project/Area Number |
25660172
|
Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
新里 宙也 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミクスユニット, 研究員 (70524726)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | サンゴ / ゲノム / SNP / ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の地球温暖化に伴う環境変動によって、世界のサンゴの約三分の一の種が絶滅の危機にあり、今後数十年以内に世界のサンゴの半分が消滅するという予測もある。本研究ではサンゴ礁の危機・白化現象を引き起こす主な原因「高温ストレス」へのサンゴの耐性・適応に関わる遺伝子を、サンゴのゲノム情報を駆使し特定することを目的とする。サンゴのストレス耐性は個体により著しく異なるという点に注目し、高温ストレスに耐性がある個体と敏感な個体を複数選別し、そのゲノム上の一塩基多型(SNP: Single Nucleotide Polymorphism)を比較することで、高温耐性や適応に関わる遺伝子やゲノム領域の特定を目指している。造礁サンゴの一種、コユビミドリイシ(Acropora digitifera)は沖縄地方に普通に生息し、全ゲノムが解読されている唯一のサンゴである。そのゲノムデータを利用することで、ゲノム上に存在する多数のSNPを特定・解析することが可能である。 本年度は、本研究課題に必要なDNA情報の解析手法の基盤を整えた。新たなソフトウェアの使用と解析法の改善により、コユビミドリイシの参照ゲノム配列の質を向上させた。これにより、一個体からより多くのSNPの特定が可能になった。そしてコユビミドリイシの成体から高品質のDNA抽出方法を確立し、次世代シークエンサー(Illumina社, GA IIx, HiSeq)を用いたゲノム・リシークエンスに成功した。リシークエンスによって得られる膨大なDNA配列データの参照ゲノムへのマッピング(SNP探索)と、膨大な量のSNPデータから高品質で信頼性が高いSNPデータを選抜する手法をパイプライン化し、信頼性の高いデータを得る解析手法を確立した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2013年夏に沖縄本島周辺で高海水温が確認され、サンゴの白化現象が起こった。それに伴い、水槽で飼育していたサンゴの大部分も白化現象により死亡してしまった。そのため、これまで水槽実験を十分行うことが出来ておらず、強い個体、弱い個体の最終的な選別には至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
サンゴの高温ストレスへの耐性・適応に関わる遺伝子特定の精度を上げるために、さらに水槽実験を継続し、数多くのストレスに強い個体、弱い個体の選別を完結する予定である。その後それぞれの個体の全ゲノムを解読して比較し、ゲノム上のどの部分が高温ストレスへの耐性に重要なのか特定したい。さらに他の研究者や漁業者などから、ストレスに強いサンゴの情報も得ているので、それらについても調べたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
2013年夏に沖縄本島周辺で高海水温が確認され、サンゴの白化現象が起こった。それに伴い、水槽で飼育しているサンゴの体部分も死亡してしまった。そのため未だストレスに弱いサンゴ個体と強いサンゴ個体の、確実な選別には至っていない。さらなる水槽実験を重ねてこれらを確実に特定した後に、ゲノムを解読しDNA配列を比較することが得策と考えた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
さらに飼育実験を押し進め、ストレスに弱いサンゴ個体と強い個体の選別を完結する。それらからDNAを抽出し、次世代シークエンサーにより全ゲノムを解読・比較して、高温ストレス応答に重要なゲノム部位の特定を目指す。
|
Research Products
(7 results)
-
-
-
-
[Journal Article] How do environmental factors influence life cycles and development? An experimental framework for early-diverging metazoans.2014
Author(s)
Bosch T, Adamska M, Augustin R, Domazet-Loso T, Foret S, Fraune S, Funayama N, Grasis J, Hamada M, Hatta M, Hobmayer B, Kawai K, Klimovich A, Manuel M, Shinzato C, Technau U, Yum S, Miller DJ.
-
Journal Title
BioEssays
Volume: 36
Pages: 1185-94
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-