2013 Fiscal Year Research-status Report
分泌膜小胞(エキソソーム)を介するメチル水銀排出経路に関する研究
Project/Area Number |
25660174
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
今村 伸太朗 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 主任研究員 (80510007)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メチル水銀 / エキソソーム / ゼブラフィッシュ |
Research Abstract |
メチル水銀は中枢神経毒性を示す有毒化学物質である。本研究では細胞内に取り込まれたメチル水銀が分泌膜小胞(エキソソーム)を介して体外に排出される分子機構を解明する。まず,飼育水中に排出されるエキソソームの特性を解析した。 飼育水中に放出されたエキソソームは,飼育水の超遠心(100,000 X g,2時間)によって分離した。分離されたエキソソーム分画には水銀と共に,エキソソーム特異的タンパク質および酵素活性が検出され,メチル水銀の濃度依存的にエキソソームの排出が活性化された。これらの結果から,飼育水からのエキソソーム分離法が確立された。蛍光ラベルされたエキソソームを血中に注入すると,ゼブラフィッシュ胚の卵黄嚢に局在したことから,血中のエキソソームは卵黄嚢から体外に排出されることが示唆された。エキソソームに含まれるCDC48,HSC70, MAP1LC3B, Rab5, SMase I,OCTN1, habp2, GAPDHタンパク質は,メチル水銀投与によって増加し,それらのタンパク質のノックダウンによってメチル水銀に対する感受性が亢進したことから,これらのタンパク質がメチル水銀の排出作用に関与することが考えられた。セレン化合物によってメチル水銀の排出が促進されることから,水銀との複合体を検出するためにセブラフィッシュを用いた長期飼育試験を行い,筋肉および肝臓をICP-MSで分析した。 以上の結果から,メチル水銀の刺激によって誘導されるエキソソーム分泌顆粒の大量精製法を確立し,エキソソームに含まれる一部のタンパク質の同定および排出への関与を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初定めた研究計画通り研究が進行している。エキソソームに含まれるタンパク質の同定および機能解析については前倒しで進めた。エキソソームの形態観察については機器の故障のため,次年度行う事とした。
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Strategy for Future Research Activity |
エキソソームに含まれるタンパク質の同定および機能解析,ゼブラフィッシュ遺伝子欠損体を用いたエキソソーム形成・排出の分子機序の解析を行う。二次元電気泳動で分離後,各タンパク質びスポットをトリプシン消化し,質量分析法によってタンパク質を同定する。新しく同定されたタンパク質に関しては,アンチセンスモルフォリノオリゴを設計し,翻訳阻害によるメチル水銀排出の効果を調べる。セレン化合物を取り込むOCTN1トランスポーター欠失体を樹立したことから,エキソソーム形成・分泌における役割を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の実施計画に含まれていた分泌顆粒の顕微鏡観察が機器の故障のためできなかった。翌年度に行うための必要額を確保するため,次年度使用額とした。 エキソソームのプロテオミクス解析のため,二次元電気泳動および質量分析に関わる必要経費として約60万円,タンパク質の機能解析に必要なアンチセンスモルフォリノオリゴ購入費として約30万円,また,遺伝子変異体を用いたエキソソーム形成・分泌の分子機序解析に必要な試薬代として約30万円,顕微鏡観察に必要な備品等で10万円を使用する予定である。
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Research Products
(9 results)