2015 Fiscal Year Research-status Report
農業の再生可能エネルギー活用によるエネルギー自給率向上と農村再生の可能性
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25660175
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 康貴 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90191452)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 環境政策 / 環境分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国のエネルギー自給率は、食料自給率よりも低い中、東日本大震災による原発事故が発生し、再生可能エネルギーの利用を飛躍的に向上させることが重要となっている。農業は再生可能エネルギーの宝庫である。従来から注目されてきたバイオマスにくわえ、農業用水を活用した小水力発電など、農業には未利用であるが、今後、多様な再生可能エネルギーを生み出す大きな可能性がある。これら農業由来の再生エネルギーについて、どんな種類の再生可能エネルギーがどれほど存在しているかなどを解明し、農業の再生可能エネルギーを活用したエネルギー自給率向上と農村再生の可能性に資する基礎的知見を与えることが本研究の目的である。 この研究課題に接近するため、本年度は、第1に、農業農村内のエネルギー需給量を分析した。具体的には、農業農村における再生可能エネルギーの地産地消の実現可能性を探究する一次接近として、地消に着目した農村における電力需要に関する分析を試みた。具体的な分析内容としては、まず、地消に着目した農村における電力需要に関して、電子ジャーナルなども活用しつつ、関連学術論文・文献資料の検索整理をする共に、関連学会の参加などを通じて、既存研究をサーベイし、分析実施にかかる論点整理を行った。以上の論点整理を踏まえ、地消に着目した農村における電力需要を推計ための耕種や酪農畜産のエネルギー原単位などのデータを収集した。第2に、生物多様性保全に配慮したコメ生産の農法について、エネルギー使用量などからの二酸化炭素排出量を推計し、地球温暖化への影響評価を試みた。その結果、慣行農法に比べ、生物多様性保全に配慮した農法においては、生物多様性保全のための取組と地球温暖化対策とがトレードオフの関係になりうる可能性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究3年目の平成27年度は、当初の研究計画に沿って、おおむね順調に進展している。具体的には、地消に着目した農村における電力需要に関して、電子ジャーナルなども活用しつつ、国内外の関連学会の参加などを通じ、既存研究をサーベイできた。地消に着目した農村における電力需要を推計するための耕種や酪農畜産のエネルギー原単位などを収集することができた。さらに、生物多様性保全に配慮したコメ生産の農法について,エネルギー使用量などからの二酸化炭素排出量を推計し、地球温暖化への影響評価を試みた結果、慣行農法に比べ,生物多様性保全に配慮した農法においては,生物多様性保全のための取組と地球温暖化対策とがトレードオフの関係になりうる可能性を明らかにできた。この生物多様性保全に配慮したコメ生産の農法についての研究成果は英文論文として国際誌へ掲載できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、以下の研究を実施する。具体的には、まず前年度に収集した耕種や酪農畜産のエネルギー原単位などを利用し、地消に着目した農村における電力需要を推計する。地消に着目した農村における電力需要の推計結果、ならびに農業由来の再生可能エネルギー供給の隘路となっている制度面も踏まえ、農業由来の再生可能エネルギーによって、どの程度、農業農村で消費されるエネルギーを賄うことが可能であるか、すなわち、農業由来の再生可能エネルギーの“地産地消”が、どの程度成立する可能性かあるかの要件を考察する。
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Causes of Carryover |
当初計画の遅延・変更により、平成27年度に未使用額(332,540円)が生じた。具体的には、平成27年度に緒元データの内容や定義の確認等に時間を要したため、平成28年度に、これら農業由来の再生エネルギーに係る緒元データを用いた解析を実施することになったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度における研究費の使用計画は、以下の通り、主として旅費、物品費、その他などに支出される計画となっている。1.旅費:学会等で研究成果を発表するための旅費、また最新の研究動向や資料収集などのための旅費への支出を計画している。2.物品費:物品費として、地消に着目した農村における電力需要量の推計などに係る研究資料の収集と関連消耗品などへの支出を計画している。3.その他:その他の費目として、英文校閲費への支出、学会参加費などへの支出を計画している。
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Research Products
(3 results)