2013 Fiscal Year Research-status Report
福島における放射性セシウムの土壌中の挙動・流出経路・稲への移行メカニズムの解明
Project/Area Number |
25660188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩澤 昌 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (80134154)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / ガンマ線 / シンチレーションサーべーメータ |
Research Abstract |
福島県の一部のため池や市街地河川、阿武隈川や阿賀野川に放射性セシウム濃度の高い底泥が堆積しているホットスポットがみられる。水系流出した高濃度の放射性セシウムの流出源を明らかにするために、溜池が、上流域から池に流出した原発事故以来の放射性セシウムの大半を底泥に蓄積していることに着目し、上流域が森林である2つの溜池と上流域の大半が市街地(工場)でアスファルトと建物で覆われた一つの溜池の底泥に蓄積している放射性セシウムの総量から得られる池の単位面積当たりの平均値(Ls;Bq/m2)と池に直接フォールアウトした放射性セシウムの値(Ffall;Bq/m2)との比(Ls/Ffall)を、サーベーメータで現場水中測定する新たな方法を開発して求めた。この結果、上流域が森林である溜池のLs/Ffallの値は0.86と0.84で何れも1より小さく上流から池へ流入した放射性セシウムよりも池から流出した放射性セシウムの方が多いことを示すものであった。一方、上流が市街地の溜池のLs/Ffall値は4.8であり、池に直接フォールアウトした量の少なくとも4倍程度もの放射性セシウムが上流域から池に流入したことを示した。これより、水系への放射性セシウムの大きな流出は流域の大半を占める森林から生じたのではなく、わずかな面積の市街地から生じたことが示された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
湖の底泥表面の放射性セシウムの濃度(Bq/m2)を水のある底泥のサンプリングによって求めるのは容易ではない。一定の断面積で定容積のサンプリングが必要であるが、このようなサンプリングは水底では困難である。また、地上の土壌と違って、水中での沈降過程で水平方向に移動するため、地点によってバラツキが大きいことが知られていおり、一つの池の全体に蓄積している総量を求めるには、多点の測定が必要である。そこで、NaIシンチレーションサベーメータを水底に入れて底泥の表面濃度を測定する方法を考案した。水中ではプローブ周囲の水がγ線を減衰させるので、鉛等の遮蔽材が不要である。しかし一方、サーベーメータを水底に置いた時に、そのままでは水底の底泥からシンチレーション管に到達するγ線が水の存在によって減衰し感度が低下するという問題がある。この問題を回避して、サーベーメータを柔らかい底泥の表面に静置して再現性の高い測定値を得るために、サベーメータの先端に発泡スチロール製アタッチメントを付けることで底面積を拡げるとともに底泥とシンチレーション管の間の水を排除して測定感度を高めることにした。市販のNaIシンチレーションサベーメータ(HPI社,5000型)のプローブのコネクター接続部をゴムカバーで防水して水中に入れられるようにし、先端に発泡スチロール製アタッチメントを付けて底泥に静置して、放射能(CPS)を測定した。底泥の放射能測定は、湖面のゴムボートからプローブを湖底に降ろして行った。池の平面上に格子状に測点を設け、放射能測定中にボートを測点に固定するために、岸に杭を打って測線上にロープを張り、ロープに沿って5mまたは10m間隔で測定した。この方法によって、ため池に蓄積している放射性セシウムの総量を正確に現場測定できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
ため池におけるセシウム蓄積量調査から、水系への放射性セシウムの大きな流出は流域の大半を占める森林から生じたのではなく、わずかな面積の市街地から生じたことが示された。今後は、農業用水路および河川における放射セシウム蓄積量の調査を行う予定である。
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Research Products
(3 results)