2013 Fiscal Year Research-status Report
機械学習を援用した東南アジアのデータ寡少流域圏における水環境統合管理モデルの開発
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25660191
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平松 和昭 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10199094)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 閉鎖性水域 / 沿岸浅海域 / 流域圏 / 窒素・リン / 富栄養・貧栄養 / 機械学習技術 / 広域的最適化 |
Research Abstract |
東南アジア新興諸国では都市・農村地域での有機性汚濁が急速に拡がっており,陸海域流域圏全体の水循環系と物質循環系を総合的に俯瞰する,いわゆる統合的な流域圏水環境管理手法の開発が喫緊の課題となっている.しかし,東南アジア諸国では流域圏数値情報や水文・気象観測データの入手が極めて困難な場合が多い.本研究では,流域圏数値情報や水文・気象観測データが寡少な東南アジア新興国の大都市近郊農業流域を対象に,流域圏水環境解析モデルの開発と流域統合管理への適用手法の開発を目指す.その際,衛星リモセンに加えて,パターン認識,サポートベクターマシン,広域的最適化など機械学習技術を最大限に活用してデータ寡少性を補完する. 初年度となる平成25年度は,GIS流域解析グループ,面源負荷グループ,閉鎖性湖沼グループ,閉鎖性海域グループにおいて,豊富な流域圏数値情報や水文・気象観測データの入手が可能な博多湾・瑞梅寺川流域圏と有明海・筑後川流域圏を対象に,できる限りの流域圏数値情報を入手し,得られたデータを最大限に活用した流域圏水環境解析モデルの構築を進めた.その結果,SWATを用いたGIS援用分布型負荷流出モデルや,閉鎖性水域・閉鎖性海域における水理学-生態系モデルを開発した. 一方,開発したモデルを東南アジア新興国流域に適用する際に観測データの寡少性を補完するため,各種の手法の開発も併せて進めた.まず,ベトナム・メコン川流域を対象に,衛星リモートセンシングを用いたデータ寡少流域における流域情報抽出と原単位法による栄養塩負荷解析手法を開発した.また,少ない観測データを最大限に活用するための最適化手法の利用について検討し,生態系モデルや流域モデルのパラメータ決定に,大域的探索手法である遺伝的アルゴリズムや制約条件付遺伝的アルゴリズムが有効であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では4組のグループからなる研究組織,すなわちGIS流域解析グループ,面源負荷グループ,閉鎖性湖沼グループ,閉鎖性海域グループを構成し,研究代表者がこれらを統括し,各グループの研究成果を互いに共有しつつ研究を進めることにしている.平成25年度は4グループともに,主に国内流域を対象に,流域圏数値情報や水文・気象観測データなどのデータを最大限に活用した流域圏水環境解析モデルの開発を進めるとともに,観測データの寡少性を補完するための各種の手法の開発も併せて進めた.4グループともに当初計画通りの成果が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,平成25年度に国内流域圏を対象に開発したフルスペック・モデルを紅河流域圏とメコン川流域圏に適用する.適用研究は4つの班ごとにサブモデル単位で行われる.その際,素過程の特徴や使用できるデータの質と量を考慮して,パターン認識,サポートベクターマシン,広域的最適化などの機械学習技術を適宜,導入してデータ寡少性を補完したサブモデルの構築を進め,4つの班ごとにデータ寡少性を補完したサブモデルの構築を完了させる.以上に基づき,衛星リモートセンシングによる土地利用・表層土壌分布の推定,土地利用の違いによる面源排出負荷ならびに自然浄化機能の定量化・モデリング,流域栄養塩負荷流出モデル,閉鎖性湖沼や閉鎖性海域での栄養塩動態モデルの開発を進める予定である.さらに,開発した流域圏水環境統合管理モデルを用いて栄養塩負荷削減の実施等の水質保全対策に関するシナリオ分析を行い,流域圏水環境の改善に向けた最適なロードマップを提言する. 現時点で「研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点」は特にない.
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