2014 Fiscal Year Research-status Report
高指向性超音波放射圧を利用した非接触受粉システムの開発
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25660198
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 浩 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50206207)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 施設園芸・植物工場 / 超音波 / 受粉システム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は超音波発生装置にイチゴの花の三次元座標を入力するため,画像処理技術を用いて,イチゴの花を抽出しその三次元座標を求める基礎的な実験を実施した。当初は,2台のカメラを用いてその角度さから対象物の三次元上の座標位置を求める両眼立体視を利用する予定であった。この方法では2台のカメラで得られた2枚の画像内において,対象物のマッチングを行う必要があるが,本研究の対象物である花の場合には一つの画像内にほぼ同じ形状の花が複数個存在していることから,2画像間での対象となる花のマッチングが非常に難しくなる。もちろん,明らかに離れている花はエラーする可能性は非常に少ないが,同じ花房内で開花している複数の花はその距離も非常に近いことから(隣接する場合もあるくらい近い距離になってしまう),花の特徴量だけからマッチングを行うと誤判定を発生する可能性が高く,三次元座標の特定ができない場合が多くなるとの危惧が発生した。そこで,三次元座標を取得できるツールとして市販されているKinectを用いることとした。 Kinectはマイクロソフトから発売されているデバイスで,人間のジェスチャーによって操作ができるものである。KinectにはRGBカメラと赤外線深度センサーがそれぞれ1台ずつ搭載されており,キャプチャーされた画像の画素ごと深度データがソフト的に付加する機能を有している。このデータセットは二次元座標とその点(画素)におけるRGB情報,さらに奥行情報からなっており,キャプチャー画像から花の二次元座標を抽出すれば三次元座標を得ることが可能となる。 そこで,本年度はKinectでキャプチャーした二次元画像からイチゴの花のみを抽出するアルゴリズムを構築するための基礎的なデータを取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本システムを用いた受粉試験をトマトとイチゴを対象にすでに実施している.トマトについては植物工場でトマト栽培を行なっている愛媛大学農学部植物工場研究センターで受粉実験を実施し,100%着果することを確認している.また,イチゴに関してはエスペックミック社が大阪府立大学植物工場研究センターの完全人工光型植物工場で試験栽培しているイチゴを用いて受粉試験を行ない,89%という製品化率を得ている.特にイチゴの場合,イチゴ表面のツブツブすべてが雌蕊に相当する部分であり,これらがすべてが受粉しないと円錐形のきれいなイチゴにならない.たとえば,片側だけ受粉して反対側が受粉できていないと,受粉していない側は果実が成長しないので,奇形果となり生食用としての価値はなくなってしまう.つまり,超音波受粉では,花全体が振動することによって花粉が万遍なく飛散するので,すべての雌蕊が受粉しきれいな円錐形のイチゴができるわけである.
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように開発したシステムの基本的機能としては,非接触受粉の要件を満たしていることが確認されているが,実用性という面ではまだ課題が残る. それは,フェーズドアレイで得られる焦点のサイズである.現状のシステムでは花を振動させるのに十分な力を発揮できる焦点サイズは1cmくらいしかなく,図6に示すように焦点を上下にスキャンさせながら装置を搬送装置に設置して移動しながら受粉させるには,搬送装置の移動速度がものすごく遅くなってしまい,実用化は難しい.そこで,画像処理技術を用いてイチゴやトマトの花の三次元座標を計測し,花のある場所にのみピンポイントで超音波を放射する技術を新たに開発することとする。
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Causes of Carryover |
上述のように現在の方法でも超音波による受粉は可能であるが,実際に現場で用いるにはスキャン方式では時間がかかりすぎることが明らかとなったため,画像処理を用いたピンポイント方式に変更することとした。そのため,27年度に画像処理関係の物品を購入するため,26年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記「理由」にも述べたとおり,画像処理による花の抽出を行うため,画像処理関係の物品を購入する予定である。
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