2014 Fiscal Year Research-status Report
ナノバブルによる水の物性変化と農作物の代謝促進への適用
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25660202
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大下 誠一 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00115693)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノバブル / オオムギ種子 / 発芽率 / 活性酸素 / 過酸化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度に溶存酸素濃度(DO)、pH、温度を同一にして20時間浸漬した結果、コントロールのバブルを含まない蒸留水に対してナノバブル含有水(ナノバブル水)において発芽率が顕著に向上することが示された。 その理由としてナノバブルの特性の1つであるゼータ電位が考えられた。ゼータ電位はpHにより変化するのでpHを変えた水で比較した結果、pH4からpH9の範囲で、ナノバブル含有水に浸漬した場合の発芽率がコントロールより高い結果が得られた。これによりゼータ電位の大きさに依存して発芽率が変化する可能性が見出されたが、その影響の一定の傾向が見極められなかった。 そこで、ナノバブルによる活性酸素発生が発芽率の促進に貢献していると想定して、コントロール水、ナノバブル水及び0.1mMから0.5mMの濃度の過酸化水素水での発芽率実験を行った。その結果、浸漬17時間での発芽率がコントロール水において28%, ナノバブル水で58%であり、過酸化水素水では濃度が0.1mM, 0.2mM, 0.3mMおよび0.5mMのときに、それぞれ、48%, 40%, 58%および54%となった。過酸化水素が種子の発芽を促進することは知られており、それは活性酸素によるものであると理解されている。 以上の結果により、浸漬した種子周囲の水に活性酸素が適度な濃度で存在すると種子の発芽が促進されることが実験的に示され、かつ、ナノバブル水による発芽率の向上の理由の1つが活性酸素の発生に起因するものであることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノバブル水にオオムギ種子を浸漬すると、コントロール水に比べて種子の発芽率が顕著に向上することが実験により確認された。さらに、その理由の1つが、ナノバブルによる活性酸素の発生にあることを、4種の異なる濃度の過酸化水素水に浸漬した実験との比較により明らかにしたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
種子の発芽率向上の理由の1つがナノバブルによる活性酸素の発生にあることが実験的に明らかになったが、これは種子の周囲における活性酸素である。今後、種子の発芽に直接関与する内生の活性酸素が同様に発生しているかを実験的に確認する予定である。
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Causes of Carryover |
研究は当初より3カ年の計画であり、実験に必要な消耗品等を年度を渡って使用中であるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験に用いる蛍光試薬およびNBT染色試薬の購入に充てる予定で、この実験を現在も継続中である。
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