2014 Fiscal Year Research-status Report
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25660209
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今川 和彦 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (00291956)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 着床 / 胎盤形成 / 共通遺伝子発現 / トロホブラスト細胞 / 細胞分化誘導 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
浸潤性着床・胎盤形成のモデルとしてラットに着目し、胎盤形成時の遺伝子発現を網羅的解析した。胚栄養膜(トロホブラスト)細胞のマーカー因子であるCdx2発現が減少するとき、転写因子Cited2の発現が上昇することを発見した。そこで、ラット胚トロホブラスト細胞株(Rcho細胞)にshRNAのウイルス導入によりCited2の発現を85%以上制限したところ、従来の巨核細胞への分化ではなく、スポンジオ・トロホブラスト細胞へと分化した。実際、その分化マーカーであるTpbpaの発現が500倍以上亢進した。現在、カンザス州立大学医学部の共同研究者M.Soares博士と共著論文を作成中である。非浸潤性着床・胎盤形成のウシの方では着床胚とその時の子宮内膜の遺伝子発現を次世代シーケンサー(RNA-seq)法で解析するとともに、両者の遺伝子発現を反映する子宮(内容物)灌流液のアミノ酸を網羅的に解析した。この時、当初の予想の10倍ほどの2,000種以上のタンパク質を同定した。これらのデータを統合すると、浸潤性・非浸潤性に関わらず、哺乳動物種の胚が子宮に着床するときには、哺乳動物種が新たに獲得した遺伝子ではなく、従来の遺伝子群を利用・活用していることがうかがえた。それらは、リンパ球ホーミングに関与する新市郡、癌の転移(上皮間葉系転換)に見られる遺伝子発現や内在性レトロウイルス・遺伝子群であった。リンパ球ホーミング因子や内在性レトロウイルス遺伝子群に関しては論文を作成中、あるいは投稿論文の改訂中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、ゲノム情報などから入手できる情報を活用し、浸潤・非浸潤性の着床・胎盤形成にかかわる因子群を抽出しようとした。ところが、それら関わる情報は乏しいか、利用価値の少ないものが多かった。そこで、従来の動物・組織・細胞とくにトロホブラスト細胞を活用し、データの蓄積を図った。研究実績で概説したようにラット・トロホブラスト細胞の遺伝子発現の網羅的解析、shRNAによる発現制御を推進するとともに、ウシ側での子宮灌流液や胚トロホブラスト細胞の遺伝子発現の網羅的解析を行った。それらの解析では膨大な量のデータが集まっただけではなく、バイオインフォーマテック側からのサポートを必要としたため、その進行が遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットやウシのトロホブラスト細胞からのデータは蓄積されただけではなく、バイオインフォーマテック解析はほぼ終了した。そのため、ラット(浸潤性)・ウシ(非浸潤性)着床・胎盤形成遺伝子発現の共通項の抽出を開始することができた。実際、共通の遺伝子発現が哺乳類になってから獲得したものではなく、リンパ球ホーミング関連や癌の転移に関わる遺伝子などを活用し、哺乳類の胚トロホブラスト細胞は子宮内膜へ着床をするところまでは突き止めた。これらをデータを基に、論文4報を作成中(作成あるいは投稿論文の改訂中)である。ただし、ラットやウシともに網羅的解析で多額の予算を使ったために、初期の目的であるエピジェネテック解析のための研究費は、本研究費からは捻出できなくなってしまった。
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Causes of Carryover |
当初、使用予定していたウシやラットのゲノム情報の利用価値が低く、両者トロホブラスト細胞解析を次世代シーケンサーやiTRAQ法を駆使し解析したことと、それら大量情報の処理に多大な時間を要したこと
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ラットやウシの遺伝子発現情報やタンパク質発現情報をほぼ整理したので、浸潤性と非浸潤性着床・胎盤形成の緯線子発現の共通項や非共通項の抽出が可能となったこと。ただし、この予算ではChIP解析まで十分に行うことはできないことから、共通項の抽出だけではなく、共通因子の着床あるいは胎盤形成での優先順位をつけるため、および抽出因子の数をできるだけ少なくするために、当研究室保有の子宮内膜とトロホブラスト細胞の共培養システムを駆使する。
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Research Products
(13 results)