2014 Fiscal Year Research-status Report
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25660259
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
細井 美彦 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (70192739)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 半数体 / 培養技術 / 倍加変化 / ウサギ半数体胚 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子改変技術は、疾患に関連した遺伝子を操作・編集することで新規疾患関連遺伝子等の発見が可能となり、新規創薬研究や疾患のメカニズムを解明するための有効なツールとなる。最近、半数体ES細胞を用いることでこれらの遺伝子改変技術の効率が飛躍的に向上することが示された。しかしながら、多くの報告はマウスであることから、ヒトを対象とした疾患研究には不十分である。そこで我々は、ヒト疾患研究を円滑に進めるため、ウサギやサルなどの実験動物種においても遺伝子改変技術の構築できる技術の開発を目指す。そこで本研究では、マウスおよびウサギにおける半数体ES細胞の獲得を目指し、それらを利用した新規遺伝子改変技術を用いた周辺技術の確立を目的とする。
本年度では、昨年度に引きつづきマウスをモデルとし効率的な半数体ES細胞の樹立法の確立を実施した。従来用いられている培養液では半数体ES細胞は自然に倍加することが知られている。そこで、我々はいくつかES細胞における未分化関連遺伝子を活性化するsmall moleculeを用いてES細胞の状態を制御することで倍加変化を抑制し、半数体を維持したまま培養する環境を作り出すことに成功した。これらの技術は、半数体ES細胞を効率的に維持する方法であり、遺伝子改変・編集に供試する半数体ES細胞を安定して供給する上で有効な培養方法であると考えられる。また、現在ウサギ半数体ES細胞樹立の試みにおいて、ウサギ成熟卵子を電気刺激により活性化し、一前核の形成が認められたものを胚盤胞期にまで発生させることに成功している。この胚盤胞期胚からのES細胞は樹立できなかったが、マウスの研究成果から、今後培養液の検討等で樹立できる可能性が高いと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はマウスおよびウサギ半数体胚由来胚盤胞期胚からES細胞を樹立し、遺伝子改変動物の作製およびその技術の確立を目的としている。 本年度では、マウス半数体ES細胞における「半数体ES細胞の自発的な倍加現象」に対して、いくつかの未分化関連遺伝子を活性化する培養条件を検討したところ、有意に倍加を抑制することを見出した。これらの結果は、半数体ES細胞を用いた遺伝子改変技術の効率化につながると考えられ、また安定した半数体ES細胞の獲得にも影響を及ぼすと考えられる。また、未分化維持機構の活性化による倍加抑制は、ES細胞における核型を含めた恒常性の維持においても非常に興味深い知見である。また、マウスに続きウサギにおいても、成熟卵子の電気刺激による半数体胚を作出し、ウサギ半数体の作製を試みている。したがって、本年度で実施した研究の達成度はおおむね順調に進展しているとする。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から、マウス半数体ES細胞(雄性または雌性)が獲得できた。そこで次年度では、前年度までの知見をもとにウサギ半数体ES細胞の獲得を計画している。従って、次年度においては、ウサギ半数体ES細胞の樹立培地の検討により、安定化したウサギ半数体ES細胞作出を試みる。ウサギES細胞が得られた場合、未分化関連遺伝子の発現や三胚葉系列への多分可能について、2倍体ウサギES細胞との比較によって評価を行う。また、半数体ES細胞の性質の保持をしながら培養する方法の検討を行う。さらに、半数体ES細胞における倍加現象とその抑制機構の解明を検討しており、効率的な半数体ES細胞の獲得技術の確立を目指す予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、マウスをモデルとした効率的な半数体ES細胞の樹立方法の確立と効率的な培養方法の確立を行った。いくつかのES細胞における未分化関連遺伝子を活性化する因子を用いてES細胞の状態を抑制することで倍加変化を抑制し、半数体を維持したまま培養する環境を検討する研究へ発展した。しかしながら、ウサギ半数体ES細胞の樹立に関する実験が進まなかったため、この領域の研究で予定されていた細胞株の解析や分化能の検討などを行う試薬や実験動物が少ないことが使用額の次年度繰越の原因となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では、引き続きマウスおよびウサギを材料とし、半数体胚及びES細胞の樹立と培養に必要な培養液・成長因子を購入する予定である。また、得られた半数体ES細胞の解析を実施するため、解析に必要な試薬を購入する。これらの解析には主に、Westernblot、Realtime-PCR、免疫染色、テラトーマ作製などを実施する予定である。また、得られた半数体ES細胞を用いて実際に未分化または疾患に関連した遺伝子を標的としたゲノム編集を施し、効率的に遺伝子改変および動物の作製が可能か検討する。そのため、ゲノム編集に必要なplasmidや遺伝子改変に必要な試薬の購入を予定している。また、本年度に得られた知見をもとに半数体ES細胞における半数体維持あるいは倍加現象の解明を行う為、それらに必要な解析試薬の購入を予定している。
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Research Products
(1 results)