2013 Fiscal Year Research-status Report
合成ゲノムベクターを用いた次世代ゲノム工学技術の確立
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25660289
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
廣田 順二 東京工業大学, バイオ研究基盤支援総合センター, 准教授 (60405339)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ゲノム工学 / 合成ゲノムベクター / 遺伝子組換え |
Research Abstract |
枯草菌は、外来DNAを1本鎖の形で能動的に細胞内へ取り込み、相同組換えによって自身のゲノムに挿入する自然形質転換能を有する。枯草菌ゲノム(Bacillus subtilis genome: BGM)ベクターシステムは、この自然形質転換能を利用し、約4.2 Mbの枯草菌ゲノムそのものをベクターとして用いる次世代DNAクローニングツールである。BGMベクターは、最大クローニングサイズがMbスケールと大きいこと、RecAによる相同組換えを利用した遺伝子改変操作が可能であること、枯草菌の胞子形成能を利用したDNAの長期間保存など、多くの特徴を有する。しかしながら、現行のBGMベクターでは枯草菌の内在性recAを利用した遺伝子操作をおこなっているため、恒常的なrecAの発現による不必要な組換えが起きる可能性がある。実際、クローニングしたDNA断片に複数の相同領域が存在する場合、その部分を介した相同組換えによってDNA領域の欠失が起きることを確認している。本研究では、クローニングしたDNAをより安定に保持できるBGMベクターの開発を目的とし、遺伝子操作をおこなうときのみrecAを誘導発現できる新規BGMベクターを構築した。具体的には、薬剤誘導型遺伝子発現システムをBGMベクターに導入し、RecA誘導型枯草菌株の作製をおこなった。相同組換えによるDNAクローニング操作の結果から、RecA誘導時にのみ自然形質転換が達成されることが確認できた。今後、RecA誘導型BGMベクターを使用することで、意図しない相同組換えを防ぐことができ、より安定で確実な遺伝子操作が可能になると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では具体的に以下のことを達成することを目標に掲げた。①B巨大DNA 操作技術の確立:挿入・欠失・逆位・伸長(連結)の全ての遺伝子改変操作を一つのベクター上で行えるシステムは無い。BGM ベクターを用い、これら全遺伝子操作を可能にする基盤技術を確立する。②確実で安定した遺伝子操作を可能にする新たなBGM システムの構築:BGM システムの問題点としてYAC と同様に恒常的相同組換え酵素RecA 活性による不必要な組換えがある。より確実・安定な遺伝子改変技術を達成するために、新たにRecA誘導型枯草菌株を構築する。③メガトランスジェニック作製技術の確立:これまで困難であったゲノムDNA の再構築を行い、Mb 超のトランスジーンの構築とメガトランスジェニックマウスの作製に挑戦する。 これまでに①、②を達成し、既に学会発表をし、年内の論文発表および特許申請を予定している。よって、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度構築したRecA誘導型BGMベクターへのマウスゲノムDNA(BACクローン)のクローニングを行い、確立した連結操作等の遺伝子操作法を駆使して、BACクローンの連結操作によるゲノムDNAの再構築を行う。最終的には、RecA誘導型BGMベクターを用いたメガベース単位でのゲノムDNAの再構築を行い、それをトランスジーンとしたメガトランスジェニックマウスの作出を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の遂行上の理由で、新規BGMベクターの構築を優先したため、トランスジェニックマウス作成に関わる研究費使用計画が次年度にずれ込んだため。 新規BGMベクターを用い、ゲノムDNAの再構築(トランスジーンの作成)ならびにトランスジェニックマウス作出のための、消耗品費(試薬)として使用する。
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