2014 Fiscal Year Research-status Report
健康長寿をめざす新規創薬ターゲットの開発にむけた寿命制御因子の探索
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25660290
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
饗場 浩文 名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (60211687)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分裂酵母 / 寿命 / 健康長寿 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「生物の寿命が如何にして決まるのか?」について理解し、その成果をヒトの健康長寿社会の実現に貢献する創薬ターゲットの開発につなげることを目的としている。このため前年度に引き続き分裂酵母をモデルとして細胞寿命を制御する因子の同定と解析を進め、以下の具体的項目に関して成果を得た。 (1)長生き変異株の解析 当研究室で取得した経時寿命が延長する長生き変異株に対して全ゲノムDNA配列を決定し、独立して行った遺伝学的解析結果とあわせることで2株についてその変異点を確定した。見出した因子は、共にこれまで寿命制御との関連が知られていないタンパク質であった。解析を進めることで寿命制御における新規な知見が得られると期待されたため、これらタンパク質について、細胞生物学的、遺伝学的解析を進めた。その過程で寿命以外の表現型も新たに見出した。今後、タンパク質の性質を生化学的に解析する予定である。 (2)長生き遺伝子の解析 当研究室で見出した、高発現することで経時寿命を延ばす因子のうち、Oga1, Ecl1, Ecl2, Ecl3に関して、その働きを仲介する因子を遺伝学的にスクリーニングした結果、候補となる因子をそれぞれ同定することに成功した。それぞれの因子間の関係を遺伝学的に解析中である。また、分裂酵母が、既知の窒素源欠乏、炭素源欠乏以外にも、金属イオン(特に亜鉛と鉄)の欠乏によって性的分化を誘導することを発見した。さらに亜鉛欠乏による性的分化がEcl1, Ecl2, Ecl3の3重欠失株では起こらないことを見出し、Ecl1, Ecl2, Ecl3が亜鉛センサーとして機能する可能性を提示した。現在、亜鉛とEcl1, Ecl2, Ecl3との結合、亜鉛欠乏と寿命延長との生理学的解析を進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分裂酵母から経時寿命に関わる因子を取得解析する目標においては、長生き変異株2株について原因遺伝子の特定に成功した。加えて、長生き遺伝子に関しても、その経時寿命延長効果を仲介する因子の候補をスクリーニングにより取得し遺伝学的解析が進んだ。このように、研究は「寿命制御因子の探索」の段階から「寿命制御因子の機能の解明」の段階へと進展しており、今後、同定した寿命制御因子の具体的働きを、特に生化学的解析から明らかにする計画である。これらの知見を蓄積することで、寿命制御因子の活性制御を可能とする化合物のスクリーング等が可能になり創薬ターゲットの開発に展開できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
分裂酵母の長寿命変異株で未だ原因変異が未定の2株について、原因遺伝子を同定する。4つの長生き遺伝子(Oga1, Ecl1, Ecl2, Ecl3)に関しては、寿命延長の分子機構について同定した仲介因子の機能解析を通して解明する。これ以外にも、ミトコンドリアの呼吸活性に影響する因子をはじめ、複数の長生き遺伝子を同定しているので、これらについても寿命延長の機構を解明する。我々が本研究過程で同定した因子のいくつかは、高等動物にも保存されるので、これらに焦点を当て構造-機能相関と、分子標的化合物のスクリーニング等に関する共同研究を実施し、新規創薬ターゲットの開発に向けた展開を図る。
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Causes of Carryover |
2014年度は、分裂酵母の経時寿命が延長する変異株を複数取得しこれらの変異点を確定する研究を進めた。年度当初はこれら変異株の全ゲノム配列解析等を外注する予定で予算を立てたが、研究内容を議論する過程で名古屋大学遺伝子実験施設の井原博士と共同研究を実施できることになり全ゲノム配列解析費用に余剰ができ、未使用額が発生した。その他の研究試薬等も見直し、価格の値引き交渉等を行った結果、支出を削減できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度の研究成果として、新たに分裂酵母の経時寿命を延長させる候補遺伝子が複数同定できた。これらの原因遺伝子を特定する為の遺伝子解析、遺伝子機能を解明する為のタンパク質の発現解析、ならびに精製・機能解析を計画している。これらの研究を遂行するために次年度使用額を使用したい。これにより、本研究の目的である「健康長寿をめざす新規創薬ターゲットの開発にむけた寿命制御因子の探索」が一層進展することが期待される。
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