2013 Fiscal Year Research-status Report
植物オルガネラのRNA編集の分子機構解明に向けた編集酵素の探索と同定
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25660292
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
杉田 護 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 教授 (70154474)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | RNA編集 / ミトコンドリア / 葉緑体 / ヒメツリガネゴケ / シチジンデアミナーゼ / リボソームタンパク質 / PPRタンパク質 |
Research Abstract |
植物のミトコンドリアと葉緑体でmRNAの特定のシチジン(C)がウリジン(U)に変換される「RNA編集」が頻繁に起こるが、RNA編集の分子機構は未だ不明である。本研究ではRNA編集酵素の探索と同定を行い、RNA編集の分子機構の解明を目指す。今年度の成果は以下の通りである。 (1)RNA編集の生物学的意義の検証: 葉緑体リボソームタンパク質S14をコードするrps14 mRNAの+2C部位と-1C部位の2カ所がRNA編集される。これらの編集部位に作用することが予想されたPpPPR_45の発現レベルをRNAi法により抑制することにより、2カ所のRNA編集部位のRNA編集効率が異なる多数のヒメツリガネゴケ変異株を取得することに成功した。 (2)RNA編集酵素活性の検証: 植物オルガネラのRNA編集酵素はシチジンデアミナーゼ活性を持つことが予想される。ヒメツリガネゴケのPPRタンパク質のDYWドメイン中にシチジンデアミナーゼ活性中心の保存アミノ酸残基が存在することから、RNA編集に働くPPRタンパク質が編集部位の配列認識とRNA編集酵素活性を併せ持つ可能性が考えられる。この可能性を検証するため、RNA編集欠損のPPR遺伝子破壊株にPPRタンパク質の全長、部分長、変異型などをコードする遺伝子を導入した多数の相補株を取得しRNA編集が回復するかどうかを調べた。その結果、RNA編集にはDYWドメイン中の特定のアミノ酸殘基が重要な役割を担っていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)PpPPR_45遺伝子のノックアウト(KO)株を取得するため、これまでに様々なコンストラクトを作製して植物体に導入したがKO株を得ることができなかった。そこで今年度はKO株ではなく、PpPPR_45遺伝子の発現を抑制したノックダウン(KD)株の取得を試みたところ、期待通りPpPPR_45遺伝子KD株を得ることに成功した。KD株を解析した結果、PpPPR_45が葉緑体のrps14 mRNAのRNA編集に関与する因子であることをほぼ実証することができた。この成果を土台としてさらなる解析を進めることができる。 (2) PPRタンパク質のDYWドメイン中にシチジンデアミナーゼ活性を有するという傍証を得ることができたのは大きな進展である。次年度予定の検証実験を進める準備も整いつつあり、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)PpPPR_45遺伝子ノックダウン(KD)株についてRNA編集以外の影響を検討するためRNA-Seq解析を行う。 (2)取得したPpPPR_45発現抑制株を用いてS14タンパク質の蓄積レベルと葉緑体におけるタンパク質合成能を調査する。このためS14タンパク質のペピチド抗体を用いたウェスタン解析を行う。S14タンパク質の蓄積レベルとrps14 mRNAのRNA編集効率を比較検討する。 (3)試験管内で合成したPpPPR_45とrps14 mRNAを混合した再構成系を用いて、RNA編集の反応キネテックスを詳細に解析する。 (4)PPRタンパク質全長、DYWドメインを除いた変異PPRタンパク質、PPRタンパク質の部分長や変異型などをコードする遺伝子を様々なRNA編集変異株に導入し、RNA編集が回復するかどうかを調べる。これにより、RNA編集に必須のアミノ酸殘基や領域を詳細に明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度取得したPpPPR_45遺伝子ノックダウン株を解析した結果、PpPPR_45が葉緑体のrps14 mRNAのRNA編集に関与する因子であることがほぼ確実になった。さらにrps14 mRNAのRNA編集以外のRNAプロセスへの影響も調べる予定であった。しかし、そのためのRNA-Seq解析を今年度中に行うことができなかった。このためRNA-Seq解析を行うのに必要な物品費の一部を次年度に使用する。 次年度の前半にRNA-Seq解析を行う。そのための次世代シーケンス用試薬等の購入に充てる計画である。
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Research Products
(8 results)