2013 Fiscal Year Research-status Report
天然物由来小分子化合物を用いた多剤耐性がん選択性のケミカルバイオロジー
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25670054
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
後藤 享子 金沢大学, 薬学系, 准教授 (50180245)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 多剤耐性がん細胞 / フラボノイド誘導体 / 異所性P-糖タンパク |
Research Abstract |
本研究の目的は、多剤耐性化(MDR)がん細胞選択的に細胞毒性を示すユニークな天然物フラボノイド誘導体TEDBを基盤とした、ケミカルバイオロジー研究を発展させることである。昨年度には、以下の2項目について研究を遂行した。 (1)TEDB誘導体の更なる構造的最適化: TEDBのMDRがん細胞選択的毒性が細胞毎の不均一な多剤耐性度に影響を受けることから、更なる最適化を目指している。フラボノイド骨格3位の置換基効果が未だ不明でもあるため、3位置換誘導体の合成による最適化を期待した。3位置換基については、水酸基がP-糖タンパクの核酸結合部位との親和性を高める可能性が報告されていることから、Algar-Flynn-Oyamada反応を用いた水酸基導入を試みた。しかしながら、TEDBの多置換非芳香族性のA環が反応の進行を妨げ、目的の誘導体が得られなかったことから別法による合成を検討している。一方で、3位ハロゲン化誘導体は得ることができたため、それを足がかりに、活性上昇に関与する可能性の有る様々な置換基の導入を行っている。 (2)TEDB標識体を用いた作用機序仮説の立証: これまでの研究からTEDBの標的は異所性P-糖タンパクであると仮定している。 4’-アジド体を用いてMDRがん細胞内での標識体の局在を調べたところ、核を取り巻く細胞質への局在が示唆された。また、B環水酸基上への標識置換基導入に向け種々のリンカーを検討した。結果、その結合様式は、エーテルタイプよりもエステルタイプの方が本来の生理活性維持に最適だという知見を得ることができた。いずれの場合においてもMDRがん細胞に対する選択性の低下が観察され、仮説の立証に向けては今後さらなる誘導体合成の検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で示したように、通常のフラボノイドにおいては進行するAlgar-Flynn-Oyamada反応は、本化合物に特徴的なA環の存在によって妨げられる結果となり、3位水酸基の導入は成功していない。しかしながら、ハロゲン化には成功しているため、様々な置換基の導入の足がかりを得ている。また、標識誘導体の合成においては、予想通り選択性の低下が認められたがMDR選択的細胞毒性活性は維持されていることが確認できた。したがって、種々の標識化誘導体合成を計画通りに行っている。これらの結果は、今後の進行において重要な知見となるもでのである。したがって、3年計画の初年度として概ね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
3位置換基誘導体合成による構造的最適化と構造活性相関研究を引き続き行う。TEDB合成中間体から3位水酸基誘導体への合成が、多置換非芳香族性のA環の性質により難航していることから、出発原料を変更することおよび新規反応の開拓を通して対応する。また、前述のアジド体で細胞内局在を検証できたが、蛍光の持続時間及び強度が確実な結論を得るためには不十分であると判断したため、さらに改善を試み他の標識誘導体の合成も継続する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度では、予定より合成部分に力を注いだため、経費のかかる生物学的な検証が、次年度に持ち越された。 生物学的検証に適した誘導体が得られた後には、ウシ胎児血清, RPMI-1640等の培地類や96-wellプレート、ピペットチップ類のプラスチック製品、加えてH25年度にはP-gp ATPase アッセイキット、アポトーシス検出用FITC-Annexin V、ミトコンドリア精製用試薬、精製タンパク質(BAX等)、抗体等の生化学的アッセイ用試薬が必要となる。また、引き続き行う合成では、蛍光標識等の有機試薬や溶剤、合成品の分離精製のためのカラム担体、構造決定に必要なNMR用重水素化溶媒等を購入予定である。
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Research Products
(1 results)