2014 Fiscal Year Research-status Report
天然物由来小分子化合物を用いた多剤耐性がん選択性のケミカルバイオロジー
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25670054
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
後藤 享子 金沢大学, 薬学系, 准教授 (50180245)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 多剤耐性がん細胞 / フラボノイド誘導体 / 異所性P-糖タンパク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多剤耐性化(MDR)がん細胞選択的に細胞毒性を示すユニークな天然物フラボノイド誘導体TEDBを基盤とした、ケミカルバイオロジー研究を発展させることである。昨年度には、以下の2項目について研究を遂行した。 (1)TEDB誘導体の構造的最適化: 初年度に引き続き、3位置換誘導体の合成を継続している。同時に、創薬化学的に汎用されているリングシステムによるB環の置換基効果も検討している。ベンゾチオフェンB環による生理活性の劇的変化は既に発表しているが、さらに今回ベンゾチオフェン6位に水酸基を導入することにより、これまでにない新しい有糸分裂特異的阻害効果を示すことを見出し、成果を論文にした(J Med Chem, 2015, 58, 2378)。 (2)TEDB標識体を用いた作用機序仮説の立証: MDRがん細胞に選択的に細胞死を誘導するTEDB-MDRを用いて、その作用機序解析を継続中である。当該年度には、TEDB-MDR感受性多剤耐性ヒトがん細胞株(KB-VIN)を用いて、TEDB-MDR耐性株を樹立した。KB-VIN細胞を用いた蛍光免疫染色による解析から、P-糖タンパク質(P-gp)は細胞膜及びミトコンドリア等の膜性細胞内小器官に局在していた。一方で、新たに樹立した耐性株ではP-gpの細胞膜での発現に変化は見られなかったが、細胞質内の2 μm程の凝集塊が観察されミトコンドリアへの局在は消失していた。このことは、ミトコンドリアに局在するP-gpが TEDB-MDRの主な標的である可能性を示唆しており、更に詳細に検討している。4’-アジド体を用いて耐性株での標識体の局在を調べたところ、KB-VINで観察された核を取り巻く細胞質への局在は消失していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3位置換誘導体の合成は難航しているが、ベンゾチオフェンB環6位への水酸基導入により、これまでにない新しい有糸分裂特異的阻害効果を見出し、成果を論文にすることができた。また、TEDB-MDR感受性多剤耐性ヒトがん細胞株(KB-VIN)を用いてTEDB-MDR耐性株を樹立することに成功し、蛍光免疫染色による解析などから、ミトコンドリアに局在するP-gpが TEDB-MDRの主な標的であるという仮説を指示する知見が得られている。従って、概ね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
3位置換基誘導体合成による構造的最適化を、新規反応の開拓を視野にいれながら引き続き行う。また、標的タンパク確定のために、引き続き標識誘導体の合成をリンカーの種類、長さ等を検討しながら行う。昨年度に得られた新たな知見を元に誘導体合成を検討し、新しい有糸分裂特異的阻害効果についての構造活性相関研究を行う。
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Causes of Carryover |
H26年度では、前年度同様合成部分に力が注がれたため、経費のかかる生物学的検証の半分が次年度に持ち越された。更に、次年度には研究従事者の数が増加することに伴い、試薬、研究機器の購入等が増えることが予想されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最適化により、生物学的検証に適した誘導体が得られた後には、生物学的検証に力を注ぐ。そのために必要なP-gp ATPaseアッセイキット、アポトーシス検出用FITC-Annexin V、ミトコンドリア精製用試薬、BAXなどの精製タンパク質、抗体等の生化学的アッセイキット用試薬の購入にあてる。これらは非常に高価である。牛胎児血清、RPM-1640等の培地類、96-wellプレート、ピペットチップ類のプラスチック成品などの消耗品、標識化合物合成に必要である機器や蛍光標識試薬、有機溶剤、分離精製のためのカラム担体(順相、逆相等)、構造決定に必要なNMR用重水素化溶媒の購入にあてる。
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