2013 Fiscal Year Research-status Report
フッ素官能基の導入による小分子生理活性物質のナノコロイド化
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25670055
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
柴田 哲男 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40293302)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | フッ素 / トリフルオロメチル / フタロシアニン / サブフタロシアニン / コロイド / 生理活性 |
Research Abstract |
ナノコロイドカプセルの母体となる含フッ素サブフタロシアニン誘導体の合成に取り掛かった。内部に取り込まれる医薬品分子の大きさは,サブフタロシアニン環の構造に大きく依存するため,大きめの分子を取り込むカプセルの母体として,一つのベンゼン環を介して縮環したダイマーを設計し,合成の検討をおこなった。その結果,トリフルオロエトキシコーティングされたサブフタロシアニンダイマー(subPc-subPc)及びサブフタロシアニン-フタロシアニンヘテロダイマー(Pc-subPc)の合成に成功した。subPc-subPcは1,2,4,5-テトラシアノベンゼンから1ステップで,Pc-subPcは3,4-ジヨードフタロニトリルから3ステップで合成可能である。またPc-subPcはX線結晶構造解析により,サブフタロシアニンユニットに由来するお椀型構造内部にトルエン等の芳香族分子を取り込むことが判明しており,ナノカプセルとしての性質を持つことが示唆された。次に,周辺のトリフルオロエトキシをトリフルオロメチル基にしたPc-subPcの合成に取りかかった。まず,芳香族への直接トリフルオロメチル化反応の開発が不可欠となった。種々検討した結果,2-cyclopropyl-1-(trifluoromethyl)-1H-benzo[b]thiophen-1-ium trifluoromethanesulfonateを用い,芳香環-ボロン酸化合物,アルキル‐ボロン酸化合物のトリフルオロメチル化を試みた。Cu触媒の存在下,酢酸エチル中,室温条件で良好な収率で進行することがわかった。芳香環-ボロン酸は,電子吸引性置換基(カルボニル基,エステル基,アミド基,ニトロ基,シアノ基),電子供与性置換基(メトキシ基),ヘテロ芳香環化合物(チオフェン)など様々な基質の利用が可能であり,基質一般性が広範囲にわたることも判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サブフタロシアニンダイマー及びサブフタロシアニン-フタロシアニンヘテロダイマーの合成に成功し,その詳細な性質を調べることにより,カプセルとしての機能の可能性を見出したことは,重要である。また,新たなサブフタロシアニンダイマー及びサブフタロシアニン-フタロシアニンヘテロダイマーを合成する際に必要な基礎反応でる芳香族への直接トリフルオロメチル化反応を,当該研究室のオリジナル試薬を用いることによって,極めて緩和な条件で収率良く進行することを見出している。物質合成から反応開発と順調に進み,論文発表も多い。以上よりおおむね順調と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノコロイドカプセルの機能をつくり出す鍵として考えている部位は,周辺のフッ素官能基である。テンプレートとなる様々なフッ素官能基を持つフタロシアニンの合成法を検討すると共に,その合成を達成するための基礎的なトリフルオロメチル化や,トリフルオロチオ化,トリフルオロメチルスルホニル化などの基礎反応開発やそれに用いる試薬開発にも力を注ぐ。また合成した化合物の分子包摂に関する情報やナノコロイド化,細胞試験なども行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
HPLCカラムにより合成したフタロシアニンダイマーを分離する予定であったが,比較的分離が簡単で,硝子カラムにより行うことが出来たため,購入予定していたカラムの40万円程度繰り越した。 フタロシアニンダイマーを誘導体化して行った場合,やはりその分離にHPLCカラムが必要となると考えられ,繰り越した費用をHPLCカラムに企てる予定である。また,研究の進展具合に応じて,薬品代などに使用する可能性もある。
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