2013 Fiscal Year Research-status Report
植物に作らせた可食性IgA抗体による腸管粘膜表面での生体防御免疫の研究
Project/Area Number |
25670063
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
今井 康之 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (80160034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒羽子 孝太 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (90333525)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 粘膜免疫 / 抗体医薬 / 免疫グロブリンA / 植物発現系 / 生体防御効果 |
Research Abstract |
母乳には免疫グロブリンA (IgA)が分泌され、乳児の腸管粘膜からの病原体や毒素の侵入を粘膜表面で防いでいる。経口投与できる分泌型IgAを抗体医薬あるいは高次機能性食品として利用できるように、4種類のポリペプチド鎖からなる分泌型IgAを植物にワンステップで発現させ、可食性植物抗体(edible plantibody)の作製を目指した。抗体遺伝子の発現には、社会的受容性を高めるため、ウイルス由来ではなく植物由来のプロモーターを利用した。ベロ毒素(Stx1)に特異的なH鎖(定常部はIgA)、L鎖、J鎖および分泌片のcDNAを、シロイヌナズナ由来のプロモーターおよびターミネーターの支配下、一つのバイナリーベクターに組み込んだ。アグロバクテリウム法でシロイヌナズナおよびリーフレタスに遺伝子導入し、組換え体を選抜した。シロイヌナズナでは、ゲノムDNAへの遺伝子導入の確認、ELISA, イムノブロット法、植物組織の免疫組織化学的染色による分泌型IgAタンパク質の発現と組み立てを確認した。レタスでは、ゲノムDNAへの遺伝子導入の確認、ELISAによるタンパク質の発現を確認した。組換え型シロイヌナズナの葉の抽出液を作製し、植物抗体の材料とした。Stx1を植物抗体で前処理すると、Vero細胞に対するStx1の細胞毒性が中和された。以上より、Stx1中和活性を有する分泌型IgA植物抗体を作製することができた。 腸管粘膜表面での分泌型IgA植物抗体による生体防御活性を測定するため、侵入局所である大腸粘膜の傷害を評価するin vivo実験系の構築を目指した。マウスの肛門よりStx1のPBS溶液を注入し、TUNEL法によって上皮細胞のアポトーシスの検出を試みた。PBS投与群と比較して、アポトーシスを起こした大腸上皮細胞の数に増加が認められたが、組織傷害の程度は比較的軽微であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
モデル植物のシロイヌナズナでStx1特異的な分泌型IgAの発現に成功した点で、研究計画を十分に達成した。さらに、リーフレタスにおいても、分泌型IgAの発現に成功し、分泌型IgAの抗原への結合を証明できた。また、組換え植物体における分泌型IgAの局在についても、光学顕微鏡による免疫組織化学的検討を実施した。以上の2点では、26年度計画を先取りしている。一方、毒素侵入局所と考えられる下部大腸上皮の傷害を検出する実験系の構築においては、上皮細胞の傷害の程度が弱く、引き続き実験方法の改良が必要である。すでに、単離した大腸上皮細胞については、0.1 ng/ml のStx1存在下24 hの培養で、下部大腸の上皮細胞選択的にアポトーシスが見られている(Kashiwamura M. et al., Biol. Pharm. Bull. 32, 1614―1617, 2009)。in vivoの条件下Stx1によるアポトーシスの検出について、アポトーシス早期のeventを高感度で検出する方法の開発をめざす予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸上皮の傷害について、TUNEL法だけでなく、より早期のeventを検出するために活性型caspase-3を特異的抗体によって検出する方法を試みる。より高感度かつ短時間でStx1による大腸上皮の傷害を検出する方法を用いて、胃内に投与した植物抗体が、肛門から導入したStx1による細胞傷害を防止するかどうかを評価する。さらに、投与した植物抗体が、分泌型IgAとして抗原結合活性を保持したかたちで大腸に到達しているかどうか、ELISAで評価する。組換え型植物体については、すでに実施した光学顕微鏡所見による抗体発現の観察をふまえ、免疫電子顕微鏡法により、植物細胞内部での発現部位を特定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は2,090円である。基金化の趣旨をふまえ研究費の有効活用のため、残額を翌年度に使用する。 翌年度の実験に必要な試薬などの物品費として、あわせて使用する。
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