2014 Fiscal Year Research-status Report
尿毒症物質産生阻害薬探索のためのヒト人工多能性幹(iPS)細胞由来肝細胞の構築
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25670080
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
齋藤 秀之 熊本大学, 医学部附属病院, 教授 (40225727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
城野 博史 熊本大学, 医学部附属病院, 准教授 (40515483)
白木 伸明 熊本大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (70448520)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 尿毒症物質 / インドキシル硫酸 / iPS細胞 / 肝細胞 / 代謝スクリーニング / 腎障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、肝臓における硫酸抱合型尿毒症物質(インドキシル硫酸、p-クレジル硫酸)の産生阻害薬物が急性腎障害に対して防御効果を示すことに着目し、ヒトiPS肝細胞を利用した新規スクリーニング技術の開発を目的とする。 熊本大学発生医学研究所・多能性幹細胞分野との共同研究により、インドキシル硫酸のin vitro産生活性を評価し得るヒトiPS細胞由来肝細胞の分化誘導方法について検討を行った。iPS細胞の培養プレートについて、ヒト凍結肝細胞の機能維持に効果があることが確認されている3次元培養プレートCell-able(トランスパレント)を用いた結果、ヒトiPS細胞(Toe)からCYP3A4活性を有する成熟した肝臓細胞を分化誘導することに成功した。本分化細胞においてインドキシル硫酸産生活性の発現を確認できた。一方、市販ヒト肝組織抽出画分におけるインドキシル硫酸産生活性に比べ、iPS細胞由来肝細胞におけるインドキシル硫酸産生活性が相対的に低いことが判明したため、薬物代謝酵素・転移酵素等の遺伝子・タンパク質発現等を含めその要因等について精査を進めている。 iPS肝細胞およびヒト肝組織抽出画分を用いた検討により、meclofenamateが強いインドキシル硫酸産生阻害作用を示したことを踏まえ、腎疾患モデル動物を用いた投与試験を予備的に実施した。結果、meclofenamateにより血清中インドキシル硫酸の蓄積が著明に低減すること、それに伴い血清クレアチニン値及び血中尿素窒素の有意な低下が観察され、meclofenamateに腎機能保護作用があること確認した。さらに、インドキシル硫酸産生活性の動物間(ヒトとラット)種差について解析を進めた結果、ヒト肝臓ではラットに比べインドキシル硫酸産生活性が約2.5倍高いこと、両組織間で類似した阻害薬物に対する感受性を持つことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、iPS肝細胞培養系の改変と凍結保存技術の確立を行うことを計画した。インドキシル硫酸産生能を有する肝臓細胞の分化誘導技術の開発については、本年度で概ね完了し、次年度以降の研究展開にむけた実施基盤を構築することができた。一方、分化誘導後の凍結保存法については条件等を中心に検討したものの解凍後の細胞生存率が低く、更なる検討が必要であることが示唆された。凍結保存に関しては、補助的な位置づけであるため、本年度の計画目標である培養系の改変によるスクリーニングに利用可能な肝臓細胞を作成することに関しては、概ね達成したと判断する。さらに、ヒトとラット間におけるインドキシル硫酸産生阻害作用について比較解析を行ったところ、両組織間で類似した阻害薬物に対する感受性を示すことが判明した。ヒトiPS肝細胞を用いた薬物スクリーニングにより、in vivo投与試験においてインドキシル硫酸産生阻害効果を示す候補薬物の探索が可能であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
iPS肝細胞モデル系を用い、共同研究提携企業が保有する化合物ライブラリから定性的・定量的にインドキシル硫酸産生阻害活性を示す化合物を探索することでシーズとなり得る候補薬物の選定試験を展開する。本スクリーニング系は、成熟化し肝臓機能の発現(薬物代謝酵素・転移酵素活性、アルブミン分泌能)が確認されたヒトiPS肝細胞を用い、前駆物質であるインドールもしくはp-クレゾールを添加後、細胞内で産生される尿毒症物資の代謝産生活性を測定する反応系である。β-NADPH(還元型ピリジンヌクレオチド)やPAPS(ホスホアデノシンホスホ硫酸)の添加条件等の設定については既に確認済みである。インドキシル硫酸と同時に、CYP2E1/CYP2A6により産生されるインドキシル、インドキシルグルクロン酸抱合体についても定量測定する。両尿毒症物質の律速過程を確認するため、各代謝ステップのKm値(基質親和性)及びVmax値(最大反応速度)を速度論的に算出する。 iPS肝細胞モデル系によりインドキシル硫酸産生阻害作用が認められた薬物・化合物を用いて虚血急性腎障害モデル動物への投与試験を行い、腎機能保護効果に関する比較精査を行う。インドキシル硫酸産生阻害活性並びに腎機能評価の測定項目として、血清中インドキシル硫酸及びp-クレジル硫酸濃度、肝・腎組織中尿毒症物質蓄積量、腎機能マーカー(血清クレアチニン)、血清尿素窒素、腎障害関連マーカー、血清電解質濃度並びに組織中過酸化脂質量を主に調べることにより、シーズ候補となる薬物の探索試験を展開する。
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[Journal Article] Hepatic sulfotransferase as a nephropreventing target by suppression of the uremic toxin indoxyl sulfate accumulation in ischemic acute kidney injury.2014
Author(s)
Saito H, Yoshimura M, Saigo C, Komori M, Nomura Y, Yamamoto Y, Sagata M, Wakida A, Chuman E, Nishi K, Jono H.
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Journal Title
Toxicol Sci.
Volume: 141
Pages: 206-217
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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