2013 Fiscal Year Research-status Report
生体内動態の時空間制御による機能的核酸デリバリーシステムの創製
Project/Area Number |
25670081
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
金澤 秀子 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (10240996)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | RNA / リポソーム / 機能性高分子 / DDS / 核酸 |
Research Abstract |
本研究では生体内の特定部位で細胞を分化誘導させるため標的部位にRNA を的確に送達するデリバリーシステムを構築し,生体内及び細胞内動態を時空間的に制御する機能的核酸デリバリーシステムの創製を目指す。DDSキャリアとして用いられるリポソームは生体安全性などの利点が多いが,血中安定性が低いという問題があり,ポリエチレングリコール(PEG)などの親水性高分子を修飾し表面を水和する方法が広く用いられている。これによりリポソームはRESなどの免疫系を回避できるが,この方法は薬物の病態細胞内導入効率が低くなるという問題がある。本研究では,血中で高い安定性および細胞内へ高い導入効率を実現できるキャリアを見出すことを目的として,表面にポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)及びその共重合体を修飾した機能性リポソームを作製した。PNIPAAmは転移温度(LCST)を境に親媒性が著しく変化する。リポソーム表面をPNIPAAmで修飾すると、PNIPAAmが親水性となるLCST以下ではPEGで修飾した場合と同様にリポソーム表面が水和して固定水層が形成され、血中安定性が高くなると考えられる。一方、LCST以上ではPNIPAAmが脱水和して疎水性となるため細胞取り込み効率が高くなると考えられる。本研究では、リポソームの固定水層厚(FALT)を測定し、温度とFALT変化の関係及び細胞取り込み効率について評価した。LCST以下ではPEG修飾リポソームと同様に表面に水和層が形成され、血清タンパクとの相互作用を回避できることが分かった。また、温度上昇に伴いFALTが小さくなり、高い細胞取り込み効率を示した。以上のことから、PNIPAAm修飾リポソーム表面のFALTを温度により変化させることで、細胞取り込み制御が可能となることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に基づきPNIPAAm 等の温度応答性高分子とN,N-dimethyl amino- propylacrylamide( DMAPAAm )等のカチオン性モノマーを共重合した環境応答性高分子の側鎖に,相転移温度が異なる温度応答性高分子をグラフトしたナノリポソームを作成した。(1)カチオン性,(2)細胞内への取り込み,(3)核に到達しやすい特徴を有する,環境応答性高分子を用いた核酸デリバリーにより,温度刺激によってDNA を放出し,核内での遺伝子発現効率の上昇を図ることが可能である。 ナノキャリア表面の高分子による固定水和層FALT コントロールによる安定化と放出制御については、本研究で開発した温度応答性リポソームは,体内動態・安定性に大きく関連しているキャリア表面の固定水和層(FALT)の制御が可能である。実際高分子を修飾することにより安定なナノキャリアを作成した。本研究では,高分子を分子設計し,FALT の最適化を行う。さらにLCSTに応じた温度応答性の薬物放出制御も可能であった。これは,透過型電子顕微鏡(TEM)による観察結果から,導入した高分子のLCST 付近での性質・構造変化により脂質膜が不安定化しラメラ相からヘキサゴナル相への相転移によることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
siRNA を標的部位へ効率的に送達する機能性キャリアの開発 作成した機能性高分子修飾リポソームを用いて、乳がんMCF-7細胞と子宮頸がんHela細胞にsiRNAを導入し、48時間後に細胞を溶解させ、ルシフェリンを添加して化学発光量をルミノメーターで測定する。その後、サンプル間の値を補正するために、タンパク定量を行う。 多くの細胞外マトリックス(ECM)タンパク質において共通するアミノ酸配列(Arg-Gly-Asp;RGD)が発見され,それらが細胞接着に密接に関わっていることが知られている。本研究ではRGD配列やラミニンに存在するアミノ酸配列(YIGSR)など,細胞表面タンパクや抗体との結合機能を有する複数のアミノ酸配列変異体を合成し,これらを導入することにより選択性を高めた機能性高分子を開発する。さらに選択性を確認するために,高分子を導入したナノキャリアにGAPDH (glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase)のsiRNA を内封し,HepG2 細胞(ヒト肝癌細胞株)等の培養細胞に導入し,導入後のGAPDH 発現量をreal-time PCR 法で検討する。 標的細胞への集積性向上と抗原認識による放出制御, pH 応答型ポリマーによるライソソーム等の細胞内pH 変化を利用した刺激応答性の薬物放出制御について検討する。
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