2013 Fiscal Year Research-status Report
慢性的なストレス負荷による新たなミクログリア作動原理の解明
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25670093
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木山 博資 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00192021)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 慢性ストレス / 疼痛 / 慢性疲労 / 線維筋痛症 |
Research Abstract |
慢性疲労症候群(CFS)や線維筋痛症(FM)のモデル動物における疼痛発症の分子メカニズムを明らかにすることをめざした。そのため、末梢、後根神経節、後角、視床などの感覚の伝導路における分子発現や神経細胞とグリアの形態変化などを解析した。痛覚異常の検定のために用いる下肢には特に炎症や損傷は認められなかった。L5の後根神経節の一部の細胞にATF3の発現が認められた。また、後角には多くのミクログリアの集積が認められた。一方、視床のVPLにはそのような変化は認められなかった。末梢の炎症や障害がないことを確かめるために血中の炎症マーカや組織傷害マーカーを用いたが炎症などを示す結果は得られなかった。このことから、本モデルでは末梢の炎症や損傷が生じないが、脊髄の後角や後根神経節になんらかの刺激が入っていることが示唆された。また、後根神経節で神経障害マーカーとなるATF3陽性細胞が少数みられ、これらの細胞は比較的大型の触圧覚や固有感覚に関連する細胞であると考えられた。次年度の課題として、この細胞の機能を明らかにする必要がある。また、CFSモデルではストレス負荷が5日を越えると前角の一部にもミクログリアの集積が見られた。またこの活性型ミクログリア近傍の運動ニューロンの一部にはATF3の発現が観察された。以上より、CFSやFMのモデル動物における疼痛の発症は、末梢に炎症や傷害ではなく、中枢のミクログリアが関係していることが強く示唆され、さらに運動機能との関連も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度実施予定だった項目は前述のようにほとんど解析が終了し、何らかの結論が得られた。これにより初年度に予定していた末梢から中枢に至る各領域での神経細胞の活性化やグリアの活性化の検索は概ね終了した。特に、末梢での炎症や傷害については血液検査や組織検査、PCRなどの各種手法を用いて、明らかな異常が認められなかった。このことは、CFSやFMの病態を考える上で好ましい結果であり、26年度の研究予定内容にうまく繋ぐことができる。また、脊髄レベルではグリアの活性化が認められたが、延髄以上のレベルでは特にグリアの明らかな異常は認められなかった。この点につては、中枢の中でも視床下部や視床以外の領域に何らかの変化が生じている可能性を排除できないので、次年度にさらに検討を加える。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度の研究は、当初の予定通りに進める予定である。特に中枢でのグリア応答が一部の腰髄の後角内側領域に限局する理由、さらに後根神経節の一部ニューロンとの関連、またごく一部の前角ニューロンでのグリアの活性化などの原因の解明を中心に研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の実支出額のうち86,255円の物品費が当初の予定より少なくなった。これは、研究の過程で試薬1件分の使用が次年度に必要となったためである。 次年度に繰り越した86,255円は次年度の物品費と合わせて、試薬を購入する予定である。
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Research Products
(6 results)