2013 Fiscal Year Research-status Report
シグナル分子・受容体を輸送する普遍的細胞突起の形成機構と形態形成における機能
Project/Area Number |
25670104
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
遠藤 剛 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30194038)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞間シグナル伝達 / 細胞突起 / シグナル分子 / 受容体 / RhoD |
Research Abstract |
マウス10T1/2間葉系細胞において,FGFによって活性化されたRhoDが,mDia3Cを活性化してアクチン線維形成を引き起こし,FGF源に向かって特徴的な細く長い細胞突起(CyN)が形成されることを明らかにした.またCyNの中をFGF受容体が受容細胞の細胞体に向かって輸送された.そこで本研究では,CyNが多様なシグナル分子の産生・分泌細胞に対して普遍的に形成され,CyNを介した細胞体へのシグナル分子-受容体の輸送が,効率のよい細胞間シグナル伝達に働いていることを実証することを目的とする.FGF以外にもさまざまな増殖因子,TGF-βファミリー蛋白質,サイトカインを10T1/2細胞に作用させると,いずれの場合にもアクチン線維を含むCyNが形成された.CyNの先端にはmDia3Cが局在していた.これらのシグナル分子に対する受容体はいずれも10T1/2細胞に発現していた.またこれらのCyN中をエンドソームが受容細胞の細胞体に向かって移動することが示された.したがってCyNはFGFだけでなく多様なシグナル分子により形成されることが明らかになった.これらのシグナル分子のうち,少なくともBMP4については,FGFと同様にRhoDを活性化することが示された.一方,LIFを安定に発現しているSNL76/7細胞においても顕著なCyNの形成がみられた.さらにSNL76/7細胞と10T1/2細胞を共培養すると,10T1/2細胞からSNL76/7細胞に向かってCyNが形成され,10T1/2細胞からのCyNはSNL76/7細胞に,SNL76/7細胞からのCyNは10T1/2細胞に接触していた.これらの結果から,CyNはLIFの受容細胞だけでなく,産生・分泌細胞からも形成され,両細胞がCyNを介して接触することにより,効率のよい細胞間シグナル伝達に働いていると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主要な目標であった,FGFだけでなく,多様な細胞外シグナル分子(増殖因子,TGF-βファミリー蛋白質,サイトカイン)によってもCyNが形成されることを明らかにすることができた.このことはCyNを介した細胞間シグナル伝達が普遍的な現象であることを示す重要な知見である.さらにBMP4についてはFGFと同様に,RhoDを活性化してCyNを形成することを明らかにした.またmDia3Cが働いている可能性も示された.これまでは,受容細胞がシグナル分子の産生・分泌細胞に向かってCyNを形成し,シグナル分子-受容体を受容細胞の細胞体に輸送することにより,CyNは効率のよい細胞間シグナル伝達に働いていると考えられていた.しかし本研究により,受容細胞だけがCyNを形成するのではなく,産生・分泌細胞も受容細胞に向かってCyNを形成し,両細胞がCyNを介して接触することにより,より効率のよい細胞間シグナル伝達に働いていることを示唆する結果が得られた.これはCyNの新たな機能を提起する重要な知見である.これらのことから,研究はおおむね順調に進展していると言うことができる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,増殖因子,TGF-βファミリー蛋白質,サイトカインの多様な細胞外シグナル分子によりCyNが形成されることを明らかにしたので,さらにGPCRリガンドによってもCyNが形成されるかどうかを調べ,CyNがより普遍的に細胞間シグナル伝達に働いていることを明らかにする.また受容細胞が形成したCyN中をシグナル分子受容体がエンドソームに乗って細胞体に向かって輸送されることを蛍光ライブイメージングにより示す.各受容体がさらに核内に移行するかどうかについても解析する.一方,産生・分泌細胞が形成したCyN中をシグナル分子が先端に向かって輸送されることを示す. BMP4についてはFGFと同様に,RhoDを活性化してCyNを形成することを明らかにした.他のシグナル分子についても,RhoDを活性化してCyNを形成するのか,それともRhoD以外の蛋白質を介してCyNを形成するのかを明らかにする.さらに産生・分泌細胞におけるCyNは,RhoDとそれによって活性化されるmDia3Cを介して形成されるのか,それとも他の機構により形成されるのかを明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究計画では,多様な細胞外シグナル分子によりCyNが形成されることを明らかにし,それぞれの分子機構を解明することを目的としている.これまでに細胞外シグナル分子として,複数の増殖因子,TGF-βファミリー蛋白質,サイトカインの作用を調べたが,まだGPCRリガンドの作用を調べていない.またこれらのシグナル分子と受容体の動態を蛍光ライブイメージングで解析するために,これらのcDNAを得て発現ベクターを構築する必要があるが,これまでに一部しか行っていない.これらについては次年度行うことになるので,そのための経費を次年度に回すことにした. 上述の理由により,GPCRリガンド等によるCyNの形成,およびまだ未解析のシグナル分子と受容体の動態の蛍光ライブイメージングによる解析に使用する.
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[Journal Article] The nebulin SH3 domain is dispensable for normal skeletal muscle structure but is required for effective active load bearing in mouse2013
Author(s)
Yamamoto, D. L., Vitiello, C., Zhang, J., Gokhin, D. S., Castaldi, A., Coulis, G., Piaser, F., Filomena, M. C., Eggenhuizen, P. J., Kunderfranco, P., Camerini, S., Takano, K., Endo, T., Crescenzi, M., Luther, P., Lieber, R. L., Chen, J., and Bang, M.-L.
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Journal Title
J. Cell Sci.
Volume: 126
Pages: 5477-5489
DOI
Peer Reviewed
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