2013 Fiscal Year Research-status Report
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25670113
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
園山 慶 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90241364)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生理学 / 冬眠 / 腸 / 上皮細胞 / 細胞更新 / ハムスター |
Research Abstract |
我々が見いだした冬眠シリアンハムスターにおける小腸粘膜上皮の細胞更新の著しい遅滞に関して、以下のような解析を加えた。 I. 小腸粘膜上皮の細胞移動速度を正確に推定する新しい方法を確立した。すなわち、チミジンアナログであるbromodeoxyuridine(BrdU)とethynyldeoxyuridine(EdU)を時間差で動物に投与し、一定時間後に腸組織を摘出して切片を作成し、BrdUを免疫組織染色により、EdUをクリック反応により検出した。BrdU陽性細胞とEdU陽性細胞間の距離を時間で除すことにより、細胞移動速度を推定することが可能となり、これによってシリアンハムスターの小腸粘膜上皮の細胞移動速度は、覚醒個体で5.9±0.6 microm/h、冬眠個体で1.1±0.2 microm/hと推定した。 II. 小腸粘膜上皮の細胞増殖・分化・移動に関与する分子の発現動態について解析した。Wnt/beta-catenin経路に着目して調べた結果、免疫組織染色によってbeta-cateninは陰窩から絨毛にかけての細胞膜近傍に観察され、陰窩底部においては細胞核にも認められ、beta-cateninの活性化による核移行が細胞増殖と関わることが確認された。このような染色態度は冬眠個体でも同様であった。また、E-cadherinの染色態度にも差は見られなかった。RT-qPCRにより、Cdc42 mRNAレベルに差は見られなかったが、Indian hedgehog mRNAレベルが冬眠個体で低下していた。 III. シリアンハムスターの小腸クリプトオルガノイドの構築・培養に成功した。すなわち、覚醒個体の小腸から陰窩を分離し、マウスの方法に準じてマトリゲル内で数日間培養した結果、オルガノイドが形成され、これを用いてEdUパルスによる増殖細胞の共焦点顕微鏡下での観察にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
冬眠シリアンハムスターにおける小腸粘膜上皮の細胞更新の著しい遅滞に関する機構解析について、当初予定していた免疫組織化学による解析およびクリプトオルガノイドの構築は達成できた。これにより、今後はクリプトオルガノイドを用いたアッセイ系により、細胞更新を制御する因子をハムスターの血清や組織ホモジネートから探索することが可能と考えている。 一方、予定していたトランスクリプトームによる遺伝子発現の網羅的解析については実施できなかったが、分析試料は既に採取しており、分析は外部委託を予定しているため、平成26年度において十分実施可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に基づき、シリアンハムスターの覚醒個体の小腸から分離した陰窩よりオルガノイドを誘導・培養し、これをアッセイ系に用いて、細胞更新を制御する因子をハムスターの血清や組織ホモジネートから探索していく。一方、トランスクリプトームによる遺伝子発現の網羅的解析を実施し、冬眠個体の小腸に特異的な発現変化を示す遺伝子を明らかにする。これらによって、冬眠ハムスターの小腸上皮の細胞更新遅滞に関与する分子が推定されれば、さらにその遺伝子ノックダウン系を確立して解析する。すなわち、デザインしたsiRNA 配列に基づく合成DNA オリゴヌクレオチドを、初代培養細胞への導入効率が高いレンチウィルスベクターであるBLOCK-iT PolII miR RNAi Expression Vector(Invitrogen社製)にライゲーションし、HEK293T 細胞にトランスフェクションして細胞培養上清からウィルス粒子を回収する。このものを用いてマウス腸粘膜組織から分離直後の陰窩あるいは培養オルガノイドへのトランスフェクションを試みる。確立できた実験系を用いて、小腸粘膜上皮の細胞更新遅滞に関与する可能性がある分子の遺伝子ノックダウンの影響を、チミジンアナログのパルス実験によって推定する細胞更新速度などを指標にして解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
きわめて少額の残額であったために物品購入等の適当な使途がみつからなかったため。 次年度受領分とあわせて物品(試薬類)購入に充てる。
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Research Products
(3 results)