2013 Fiscal Year Research-status Report
マラリア原虫雄特異的に発現するプロテアーゼの機能解析
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25670202
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
石野 智子 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 准教授 (40402680)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マラリア / 有性生殖 / 雄性生殖体形成 |
Research Abstract |
マラリア原虫は蚊によって媒介される寄生虫であり、蚊の消化管内で有性生殖を行う。本研究課題は、独自に同定した雄の生殖母体特異的に発現する分泌型プロテアーゼ様新規分子(PyGM75)の機能解析を通じて、これまで明らかにされてこなかったマラリア原虫の有性生殖の分子基盤の解明に迫ることを目的として行う。プロテアーゼ活性の検出や生体内基質同定といった生化学的解析を、従来の逆遺伝学的解析法と融合させることで、寄生性原虫の有性生殖メカニズム解析に向けての突破口となることが期待される。 当該年度は、 遺伝子欠損原虫作成によるPyGM75の有性生殖における役割の解明を行った。相同組換えにより、PyGM75コード領域を欠失させた組換えネズミマラリア原虫を作出した。得られたpygm75欠損原虫を用いて、雄性生殖体形成、発育の効率、さらには、媒介蚊体内での受精効率を検討することで、PyGM75の有性生殖における役割を解析した。その結果、pygm75欠損原虫は雄性生殖母体には正常に分化するものの、蚊への感染効率が極めて抑制されることを見いだした。 次いで、PyGM75のプロテアーゼ様ドメインが機能に関わるか否か明らかにする目的で、コムギ胚芽由来無細胞タンパク質合成系を用いて、組換えPyGM75タンパク質を発現させた。この際に、予想される活性中心残基(2カ所)に変異を入れた変異体タンパク質も同時に合成を行った。タンパク質は十分量、合成・精製できたが、現在までにBSA、あるいは合成ペプチド基質を用いたところタンパク質分解活性は見いだされていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当該分子を欠損させた遺伝子改変マラリア原虫の作出、及びその表現型解析を通じて、PyGM75が有性生殖において重要な役割を果たすことを見いだすことに成功した。現在までに、プロテアーゼ活性を検出するには至っていないが、生体に於いてプロテアーゼ活性は、厳密に制御されている例が多く知られている。基質の種類を増やしてもう少し検討は続けてみるが、in vitroで検出できない場合は、次年度に計画している「変異型PyGM75」の発現原虫を作出することで、in vivoにおいてプロテアーゼ活性が機能とリンクしているか否か解析する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、PyGM75がマラリア原虫の雄性生殖体成熟に重要な役割を有することで、有性生殖に関与することを見いだしてきた。今後は、 非活性型PyGM75発現組換え原虫を作出し、プロテアーゼ活性と機能の相関の検証を行う予定である。具体的には、A) PyGM75の予想される活性中心アミノ酸残基に変異を導入し、不活性型PyGM75発現組換えマラリア原虫を作出する。B) 不活性型PyGM75発現原虫の有性生殖の効率を、野生型/pygm75欠損原虫と比較し、PyGM75の雄生殖体分化における機能が、プロテアーゼ活性により担われているのか検証する。 プロテアーゼ活性中心アミノ酸残基が機能に重要であることが明らかになったら、次に、PyGM75の生体内基質の同定を試みる。方法は、A) PyGM75不活性型発現組換え原虫の生殖母体/生殖体の縣濁液に、組換えPyGM75あるいは不活性型PyGM75を添加してインキュベートした後、二次元電気泳動により展開し、タンパク質のスポットパターンに違いが見られるか検討する。差が見られた場合、LC-MS解析により基質候補タンパク質を同定する。 B) 基質候補タンパク質が見出されたら、組換えタンパク質を抗原とした特異抗体を作成する。野生型原虫と、PyGM75不活性型発現組換え原虫の縣濁液をSDS-PAGEで展開し、western blottingにより、PyGM75不活性型発現原虫では、標的タンパク質の分解が抑制されていることを確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝子組換え原虫作出、あるいは、そのコンストラクト作成のための実験が、予定していたより効率よく進行させられた、また、使用途中の試薬類を用いて行うことが可能であったため、物品費を予定より節約することができた。 さらに複数の遺伝子改変原虫作出予定であり、そのための試薬代、動物購入費としての物品費として、次年度分と合わせて1411570円使用予定である。旅費は、379320円、成果報告の為の費用等は、186025円使用予定である。
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