2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25670246
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
齋藤 信也 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (10335599)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下妻 晃二郎 立命館大学, 生命科学部, 教授 (00248254)
能登 真一 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (00339954)
白岩 健 国立保健医療科学院, その他部局等, 研究員 (20583090)
児玉 聡 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80372366)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 医療資源配分 / 功利主義 / 平等主義 / ラショニング |
Research Abstract |
平成25年度前半には、医療ラショニング原則に関して、平等主義と功利主義の関係、功利主義と救助原則に代表される直観主義、およびその心理機制について、基礎的な文献的検討を行い、研究者間で討議の後、論点を整理した。次に、国民を対象に、医療資源配分における平等主義と功利主義のトレードオフの関係を、予算制約・資源制約を明確にした上で明らかにする目的で、年齢・性別で調整し無作為抽出した対象1143名に調査を行った。病気A: 治療費が患者一人当たり200万円 病気B:治療費が患者一人当たり1000万円の場合、地域の医療予算が年間1億円として、どのような配分法を選ぶか尋ねたところ、最も平等主義的な選択肢(A10人、B8人)が217人であったのに対し、極端な功利主義的選択肢(A50人、B0人)が379人と、最も多くの人に選ばれていた。なお両者の折衷的な選択肢(A30人、B4人)を選んだ人は289人であった。次に、功利主義的傾向の強さに回答者の属性により違いが見られるかどうかを検討したところ、年代、学歴、雇用形態、婚姻状況、個人収入、世帯収入による違いが見られた。また年齢と功利主義的傾向には弱い相関も見られた(相関係数0.29 p<0.01)。学歴では、高学歴化が進むにつれ、平等主義的傾向が強くなっていたが、これには年齢の交互作用は認めなかった。オーストラリアで行われた同様の調査では、平等主義と功利主義の折衷的な選択肢を選んだ回答者が最も多く、今回の結果と好対照をなしていた。 これまでわが国でこうした医療資源配分に対する国民の基本姿勢を問うたナショナルサーベイに類するものはほとんどみられず、そうした中である程度のサンプル数をもったデータが得られたことに意義があると考える。また、海外データに基づく予想よりもわが国においては、医療資源配分に関して、功利主義的傾向が強いことが明らかとなったことにも意義があるものと思われた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度に行う予定であったインターネットを利用したインタビュー調査が行えていない。これは、当初予定ではナショナルサーベイで調査できなかった部分を補う目的で予定していた補助的な調査であるが、ナショナルサーベイの結果予想以上のデータが得られたこともあり、これを当初の予定通り行うかどうかは現在検討中である。また、医師に対するフォーカスグループ・ディスカッションのパイロット調査も平成25年度中に行う予定であったが、平成26年度にずれこんでいる。その原因はパイロット調査への協力医師のリクルートが予想より困難であったためである。本調査は平成26年度に行う予定であったことから、本調査と一体として行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
一般国民への調査は予定通りデータが得られたことから、当初予定していなかった医師の医療資源配分に対する考え方について同様の調査をおこなうことで、一般国民の回答との異同をみることを検討している。また同時に医師に対するフォーカスグループ・ディスカッションを年度半ばでには行う予定である。これにより、ベッドサイド・ラショニングのカテゴリーに入ると思われる医学的無益性や効率性の観点に基づく「治療差し控え」や「治療中止」の経験の有無に関する解析を行い、本研究のもう一つの目的である医師のベッドサイド・ラションニングの現状とそれに対する基本姿勢を明らかにしてゆく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度内に終了する予定であった調査が行えなかったため、それに要する費用が年度をまたいで持ち越しとなったことが当該助成金が生じた理由である。また当初予想より、調査に要する費用がかさむことが判明したため、平成26年度の予算と合算して調査を行うことが妥当と判断したことも理由である。 サンプル数300の医師対象調査に要する費用を120万円程度と見積もっていることから、平成25年度から持ち越した87万を加えて、これにあてる予定である。また残余の金額は当初計画通り執行予定である。
|
Research Products
(4 results)