Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,平成25年度に行った国民対象の医療資源配分に関する調査に基づき,同じ内容の質問項目を含む調査を,医師を対象として行った。 対象は全国の医師1089(男性891:女性198)名であり,年齢,診療科は母集団を代表するようなサンプリングとなっていた。予算制約(1億円)を明確にした上で,治療費が患者一人あたり200万円の病気Aと,1000万円の病気Bの患者の間で,望ましい予算配分法を尋ねたところ,極端な功利主義的選択肢(A50人,B0人)を選んだ回答者が424人と最も多かった。最も平等主義的な選択肢(A10人,B8人)は187人,両者の折衷主義的傾向の回答(A30人,B4人)は277人であった。この回答傾向は一般国民に対するものとほぼ同一であった。 次に,対象者全員に検査を行い,1000人を救命するオプションと,対象者をくじで,半数にした後に高額な検査を行い,結果として1100人を救命するオプションを比較したところ,前者を選んだ医師が699人,後者は390人であった。 次に,「費用対効果」の概念を医療に持ち込むことに賛成が86%,費用対効果に優れた医療技術の導入に賛成が92%,費用対効果に劣る医療技術の保険適応制限に賛成が63%等と,多くの医師が医療に費用対効果を用いることに賛成していた。 次にベッドサイドラショニングと呼ばれる臨床場面での個別の資源配分に関しては,まず,日常診療に経済的視点を持ち込むことに反対が39%であり,また,公的医療保険の制約により診療内容に制限を加えることはないものが58%であった。また,医学的無益性の判断に経済的観点を持ち込まないものは20%であった。ベッドサイドラショニングに通じる行為は避けようとする医師は少なくないものの,それが避けられない現状が明らかとなった。包括払い下で,副作用はわずかに多いものの低額な造影剤(どちらも保険収載)の使用に関して,「良くない。行ったことはない。」とした医師は19%であったのに対し,「問題はない。行ったことがある。」は32%であった
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