2013 Fiscal Year Research-status Report
人工制限酵素を用いたミトコンドリアDNAへの変異導入法の開発と確定診断への応用
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25670261
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
八塚 由紀子 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (20458524)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミトコンドリアDNA / 遺伝子診断・治療 / 人工制限酵素 / 遺伝子工学 |
Research Abstract |
ミトコンドリア呼吸鎖異常症(Mitochondrial Respiratory Chain Disorder: MRCD)は電子伝達系の機能不全によって生じる遺伝病である。我々はMRCDの原因となる遺伝子変異を同定するためミトコンドリアDNA(mtDNA)と核DNAの配列解析を行った。mtDNAの全周配列解析で同定した新規変異のうち1例は、実際に病因変異であると確定できた。しかし、現行の診断法(Cybrid法)は患者由来細胞が必須である等の制限が多く、我々は新たな診断法を模索している。 初年度はミトコンドリアDNAへの変異導入技術を開発するため、ミトコンドリア局在型人工制限酵素“mito-TALEN”の作製を行った。現在、Zinc Finger Nuclease (ZFN)、Transcription Activator-Like Effectors Nuclease (TALEN)、CRISPR/Cas9といった人工制限酵素が使用されている。我々はより柔軟に塩基配列結合部位の設計が可能で、off-target効果も比較的低いとされる、TALENを選択した。核移行型TALEN発現ベクターを改変し、10種類のミトコンドリア移行シグナル(MTS)と2種類のプロモーターの組合せからなる計20種類のmito-TALENを作製した。これらmito-TALENのミトコンドリア局在を確認するため、ヒト皮膚線維芽細胞で過剰発現させ、細胞画分に分けてウェスタンブロッティングを行った。また、免疫染色にて、MTSおよびプロモーター配列の機能評価を行った。その結果、作製したmito-TALENが実際にミトコンドリアに局在し、また、プロモーター配列の使い分けにより発現の強弱を調節できていることが確認できた。 上述のmito-TALEN作製に並行して、ドナーDNAのミトコンドリア輸送系構築にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、ミトコンドリア移行型TALEN(mito-TALEN)の開発から開始したが、核移行型TALEN発現ベクターをミトコンドリア移行型に改変するための手法の検討に時間を要した。In-Fusion酵素を利用してベクターとインサートの末端相同配列を融合させる手法を用いたところ非常に効率よくベクター構築を行えるようになった。これらのmito-TALEN発現ベクターの機能評価を行うため、各種mito-TALEN発現ベクターを導入した培養細胞で、ミトコンドリア、細胞質、核画分を単離し、ウェスタンブロッティングを行ったが、分画条件の検討や抗局在マーカー抗体の検出条件の決定に予想以上の時間を費やした。最終的には、(1) 細胞画分別ウェスタンブロットで各種mito-TALENの発現が確認でき、さらに(2) ミトコンドリア画分マーカーとmito-TALENが同じ挙動を示し、(3) 免疫染色でmito-TALENのミトコンドリア局在を観察できたことからミトコンドリア局在化TALENの骨格部分の作製が完了した。現在、TALE作製に必要な約50種類のプラスミドについて上記の実験と併行して下準備を進めている。また、初年度に点変異導入のためにドナーOligoペプチド核酸のミトコンドリアデリバリー系を確立する予定であったが、作製に時間がかかり且つ高価であることから、本研究目的に沿うように、より短時間に安価で作製できる実験系を構築することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、ミトコンドリアDNA変異導入のためのドナーDNA用に、MTS付加オリゴペプチド核酸を使用する予定であったが、1件につき数十万円超の費用を要する受託合成になり、汎用性も低いことが欠点であった。そこで、より短時間に安価で作製可能な方法の調査・検討を進める中、自家合成できる可能性が高い方法に辿り着いた。その方法が実現すれば、本研究が目的とする変異導入法の開発に大変有用であるため、現在、さらに調査・検討を進めつつ、実際に実験系を構築するために必要な試薬類の選定を始めている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
TALEN expression kit購入費用として30,000円を計上していたが、改良版(Yamamoto Lab TALEN Accessory Pack)の追加購入や米国からの運送費用が当初の予想よりも必要になり、実際には90,817円が必要であった。またプラスミドシークエンスを読むための試薬一式の購入単位が大きく、全部で86,580円かかった。初年度の達成度としてはやや遅れており購入を来年度に回したものがある一方で、当初の予想より高額となった試薬が発生したため、収支は+67,761円となった。 次年度使用額が67,761円発生し、当初翌年度分として請求していた1,200,000円と合わせると1,267,761円となる。およそ1,270,000円と考えた時、その配分は、細胞培養関係試薬200,000円、遺伝子組換え実験関連の試薬970,000円、一般器具類100,000円を予定している。 ミトコンドリアDNAに変異を導入するにあたって細胞培養関係試薬や一般器具類の購入経費は必須である。また、遺伝子組換え実験関連の試薬としては、配列特異的TALEN 作製するための遺伝子組換え実験試薬、ドナー用MTS付加オリゴDNAの作製費用、変異導入後の細胞のミトコンドリアの機能評価に必要な試薬、消耗品の購入費用などを含む。
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Research Products
(3 results)