2014 Fiscal Year Research-status Report
異常増殖する滑膜細胞が構築する擬似血管を標的とした新規関節リウマチ治療法の開発
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25670262
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
平田 圭一 帝京大学, 薬学部, 助手 (80424852)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 擬似血管 |
Outline of Annual Research Achievements |
滑膜の異常増殖を伴う関節リウマチは,関節炎の憎悪と寛解を繰り返し,関節破壊などにより関節機能が障害されることが知られている.その主な要因は,異常増殖滑膜より産生される破骨細胞誘導因子により破骨細胞が分化誘導および活性化され,軟骨や骨が破壊されることが知られている.そこで,破骨細胞誘導因子を産生する異常増殖滑膜を阻害することが,抗関節リウマチ効果を得るためには重要な点と考え,異常増殖滑阻害を作用機序とする治療法の確立を目指した開発を試みる.その標的として注目したのが,異常増殖する滑膜における血管内皮細胞とは異なる細胞より構築された擬似血管である.その擬似血管の阻害は抗新生血管療法より効果的な滑膜増大の阻害が期待できる. 本研究では,まず関節リウマチモデルマウスから,異常増殖する滑膜における滑膜細胞を採取した後,in vitroで擬似血管構成モデルを作成し,それを用いて擬似血管特異的抗体の創製を目的としていた.本研究の検討で,関節リウマチモデルマウスにも,病変滑膜の組織学的評価において,擬似血管の指標であるPAS染色陽性部位が観察された.しかしながら,マウスにおいては,関節部位の滑膜細胞層がヒトと比較して顕著に薄いことに加え,PAS陽性部位が占める割合が少ないことから,採取した滑膜細胞より擬似血管をin vitroで再構成することは困難であった.そこで,擬似血管研究が盛んながんを利用し,in vitroで作製したがん擬似血管モデルに対する遺伝子解析より特異的抗原を選定し,調製した特異的抗体より,滑膜擬似血管に特異的な交差反応を示す抗体を利用することとした.In vitroにおけるがん擬似血管モデルにおいて,in vivoと相関を示さないことが問題点であるが,今回はその問題点を克服した新規作成法を考案し,遺伝子開発ツールとして用いる擬似血管モデルを開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
関節リウマチの病変滑膜における擬似血管研究に関する報告例はない.従って,関節リウマチモデルマウスがヒト同様に擬似血管の病理所見を有するかは明らかにはなっていない.本研究において,前回の報告では,病変滑膜における擬似血管において,組織学的評価でモデルマウスが擬似血管の指標であるPAS染色陽性部位を有することが確認できなかった.その後,関節リウマチモデルマウス作成法における関節炎誘導について,免疫学的手法などを改変して作製したモデルマウスでは,病変滑膜組織においてPAS染色部位を観察することが可能であった.その結果が得られたことから,病変滑膜細胞を採取し,in vitroで擬似血管を再構築した後に,ファージディスプレイ法を駆使して,擬似血管特異的抗体の創製を行う手順であった.しかしながら,関節リウマチモデルマウスの増殖した滑膜においても,関節部位のごくわずかな部位でしかなく,特異的抗体作成に用いるin vitro三次元培養による擬似血管再構築モデル作製に使用する病変滑膜細胞を必要量採取するには,in vitro擬似血管モデル1検体の作製につき,およそ数十匹の関節炎モデルマウスの作製が必要と考えられた.さらに,疾患モデルマウス作製には約2ヵ月程度要することから,当初の計画では非効率であると判断したため計画に修正が必要となったことが原因と考えられた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として,当初の実験計画に修正が必要と考えられることから,まず擬似血管研究が行われているがんを利用し,in vitroがん擬似血管モデルを作成し,いまだ報告例のないがん擬似血管特異分子マーカーの探索を検討することで,がん擬似血管特異的な分子マーカーを特定する.その検討より得られた結果を利用し,さらに関節リウマチ病変滑膜における擬似血管にも同様に発現している分子マーカーの特定を検討する.がんと関節リウマチでは,擬似血管を構成する細胞種は異なるが,構築された擬似血管構造が類似していることから,がんと関節リウマチの擬似血管共通に発現している特異的分子マーカーの存在が期待できる.既存のがん擬似血管in vitroモデル作製方法では,in vivoと相関しないなど問題点を有するが,今回,それら問題点を克服すべく既存の擬似血管作製方法を改変し,in vivoと相関する新規擬似血管モデル作製方法の開発に成功した.したがって,それら擬似血管モデルを利用し,遺伝子解析を行うことで擬似血管特異的分子マーカーの特定が期待できる.現在,分子マーカーの探索を検討しており,今後は解析結果から分子マーカーの選定を行う.分子マーカーが明らかになれば,そのマーカー分子を抗原として,病変滑膜の擬似血管を標的とした免疫療法の検討を行う予定である.
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Causes of Carryover |
本年度使用額分から生じた次年度使用額は約三千円であり,ほぼ予定通りに使用していると考えている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度は擬似血管特異的分子マーカーの選定,さらに,マウスを用いて,選定したマーカー分子を標的とした抗擬似血管療法の検討に用いる.
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