2013 Fiscal Year Research-status Report
新規核種(89Zr)標識ヒト化低分子抗体によるがんのPET画像診断法の開発
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25670273
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松浦 栄次 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20181688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 崇了 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10461253)
竹中 文章 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10642522)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 89Zr / がん / PET / 低分子抗体 / 画像診断 |
Research Abstract |
本研究では、がんの画像診断を可能にする「抗体PET(Positron Emission Tomography)プローブ」の開発を目的として、がん抗原mesothelin(MSLN)に対する低分子化抗体(single chain variable fragment, scFv)を作製し、新規放射性核種89Zrをキレート剤であるDFOを介して標識することでPETプローブ化し、そのがんのPET診断における有用性について評価を行っている。 ① マウスモノクローナル抗MSLN抗体のCDR領域遺伝子配列と、ヒト抗体のフレームワークを組み合わせて発現ベクターを構築し、ヒト化抗MSLN抗体(全長)をチャイニーズハムスター卵巣細胞で発現させた。次に、L鎖の可変領域とH鎖の可変領域をLinkerを介して繋げたscFvの遺伝子配列を発現ベクターに組み込み大腸菌で発現させ、ウエスタンブロットにより目的とするscFvのバンドを検出し、濃縮培養上清のELISAでMSLNに対する結合を確認した。同様にマウス抗MSLN scFv抗体を作製し、MSLNに対する結合を分子間相互作用測定装置により測定した結果、100nM程度の解離定数を示した。 ② ヒト化抗MSLN抗体IgG、ヒト化抗HER2抗体(Trastuzumab、IgG)を用いて89Zr標識法について検討した結果、70MBq/mg以上の高い比放射能を有する放射標識抗体が得られた。89Zr標識Trastuzumabの培養がん細胞への結合について調べた結果、HER2高発現細胞株に対して解離定数1nM程度の極めて高い親和性での結合を示した。また、pSCN-Bn-NOTA、NOTA-NHS、DOTA-NHS等の種々のキレート剤を介して64Cu標識したヒト化抗MSLN抗体IgGによるMSLN高発現細胞株への結合を調べた結果、30nM程度の解離定数を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト化抗MSLN抗体のL鎖とH 鎖の可変領域よりscFvを作成したが、目的のscFvの発現量が少なく、凝集物が多く確認された。この原因として、ヒト化により安定した形にfoldingされにくいことが推定されたため、収量改善のためにマウス抗MSLN抗体の配列に戻ってscFvを作製した。その結果、ヒト化scFvよりは多いものの、やはり十分な発現量は得られなかった。研究を遂行する上で十分量のヒト化scFvを得るため、発現効率の良い、安定した構造のscFvの作製法について引き続き検討する必要がある。 IgG全長抗体を用いてDFOを介した89Zr標識法について検討した結果、高比放射能で標識可能な条件を得た。また、培養がん細胞に対する89Zr標識Trastuzumabの結合を調べた結果、89Zr標識によって抗体活性が低下しないことを確認した。64Cu標識したヒト化抗MSLN抗体IgGについて同様に培養がん細胞を用いて結合親和性について検討したところ、MSLN高発現細胞株に対して特異的な結合を確認し、PETイメージングを実施する上で十分高い結合親和性を示した。以上の結果から、PETイメージングに適した89Zrおよび64Cu標識法が確立されたと考えられる。抗MSLN scFv抗体については収量が不十分であったため、これらを用いた検討には至らなかったが、十分量のscFvが得られ次第、89Zrおよび64Cu標識ならびにPETイメージングによる体内動態解析を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
1)抗MSLN抗体scFvの作製を引き続き行う。 2)上記の調製ができるまでの間に、対照抗体について89Zrあるいは64Cuによる標識、細胞結合実験の条件検討をひき続き行う。 3)抗MSLN抗体scFvの発現・精製が出来れば、抗原との結合親和性解析、89Zrあるいは64Cuによる標識、細胞への結合実験を順次行う。 4)RI標識抗MSLN抗体scFv、および各種対照抗体(IgG全長)投与後の担がんマウス生体内における経時的な放射能分布の変化をPETにより測定する。
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