2013 Fiscal Year Research-status Report
新しい低分子量機能性ドメイン群の創製と臨床化学への応用
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25670280
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
小林 典裕 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (90205477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大山 浩之 神戸薬科大学, 薬学部, 助教 (80572966)
森田 いずみ 神戸薬科大学, 薬学部, 助手 (20299085)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 進化分子工学 |
Research Abstract |
抗体は、特定の抗原の化学構造を認識する分析試薬として重用されるが, VHとVLの2つのドメインの会合が必要なうえ分子量が大きく大腸菌内での発現量も低い. この点を克服するため、マウス抗エストラジオール(E2)抗体のH鎖可変部ドメイン (VH) を基本構造とし、様々なハプテン結合能を示す、単一ドメイン抗体の創製を試みた. 相補性決定部H3の連続する7アミノ酸残基をDVSコドンによりランダム化、または連続する5アミノ酸残基をNNSコドンによりランダム化した2種ライブラリーから、受動喫煙マーカーであるコチニン (CT) と結合するクローンを9種得たが、いずれも親和力が不十分で、分析試薬としての応用は困難であった。 一方、単量体化したストレプトアビジンstav (stav´) のループ部位にランダム変異を導入したライブラリーを作製し、コルチゾール (CS) とエストラジオール (E2) に対する結合能を獲得した分子種の探索を試みた。CSおよびE2とstavとの複合体についてin silico分子モデリングを行い、ステロイド分子と接触が示唆されたループ部位 (A、B、C) のいずれかについて、連続する3つのアミノ酸残基をランダム化した3種の遺伝子ライブラリーを作製した。その産物である変異stav'をファージ提示したのち、CS、E2に結合能を示すクローンをELISA (ステロイド-BSA結合体あるいはBSAを固定化したプレートとの結合能をシグナル化する) により選別した。その結果、CSについてはCS-BSA/BSA比が10.5、7.9のクローンが得られ、E2についてはE2-BSA/BSA比が3.1、4.1のものが得られた。野生型stav´のELISAによるシグナルとの比較の観点から、これらのクローンはCSまたはE2に対する結合能を獲得したものと判断された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究題目である「新しい低分子量機能性ドメイン群」の基本となる枠組み構造 (scaffold) の候補として、単一ドメイン抗体 sdAbと単量体化ストレプトアビジンstav の2種について試験したところ、sdAbについては良好な結果が得られなかったが、stavでは期待が持てる結果が得られ、現在も検討を続けている。上記のように、一回の変異の導入で、CSについてはCS-BSAに対する結合能がBSA (コントロールである) への結合能に比べて10.5倍、7.9倍大きいクローンが得られ、E2についてはE2-BSA/BSA比が3倍、4倍のものが得られている。これらの値は野生型stav´よりも明らかに大きく、ステロイドに対して結合能を獲得しつつあるもの、と評価される。これらのE2結合性クローン、CS結合性クローンについて、最初に変異が導入されたループとは異なるループにランダム変異を加えた、「第二世代の変異体」 (すなわち、A、B、Cの3種のループのうち2つに変異を持つクローン) のライブラリーを作製し、CS-BSA/BSA比、E2-BSA/BSA比がより大きい変異体の探索を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、上記の「第二世代の変異体」から、E2-BSA/BSA比、CS-BSA/BSA比が第一世代に比べて大幅に改善されたクローンを探索する。ステロイド特異的な変異体を選択する手法として、これまではステロイド-BSA結合体を吸着させた試験管への結合反応に基づく標準的な「パンニング」を用いてきた。非特異的なファージを洗浄・除去したのち、結合した特異的なファージは、酸や塩基の添加によるpHの変化、あるいはステロイドの添加による競合反応により固相から回収される。しかし、高親和力のstav' 提示ファージは回収されないおそれがある。そこで、申請者の研究室が開発した改良法 (標的ステロイドを、ペプチドタグあるいはビオチンと化学的に切断が可能なリンカーで連結した化合物をキー試薬として用いる方法) を活用する。得られた第二世代の「ベストクローン」について、まだ変異のない3番目のループにランダム変異を導入した第三世代ライブラリーを作製して、さらに選択を続ける。そして、第三世代の「ベストクローン」については、stav' のβシート部分 (in silicoモデリングにより、ステロイド類はstav' のループのみならず、βシートの一部とも相互作用しうることが示唆されている) への変異の導入を試みる。さらに、error-prone PCRによる、stav' 分子全体に少数のランダム点変異を導入して、結合能に「微調整」を加えることも試みる。以上のプロセスにより、stav' を基本構造とする機能性分子において、ステロイドへの結合能をどこまで高めることができるか、を見極めたい。
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Research Products
(7 results)