2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞老化関連遺伝子TARSHを用いた肺癌の治療と予防
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25670283
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
丸山 光生 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 老化機構研究部, 部長 (00212225)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 癌抑制 / バイオマーカー / 遺伝子発現制御 |
Research Abstract |
細胞老化は単なる不可逆的な細胞増殖の停止というだけでなく、アポトーシス(細胞死)を免れ、かつ癌に対する生体の防御機構であろうと考えられている。我々はMEF細胞より細胞老化関連因子TARSHを同定し、マウス、ヒト正常肺に特異的に発現すること、ヒトの肺癌細胞株や種々の肺癌組織においては正常部位と比較して、ほぼ全例で遺伝子発現が有意に低下していることを見いだした。こうした知見を元にTARSHの発現が肺癌のバイオマーカーになり得るという検証とTARSH遺伝子の発現を制御させることでヒト肺癌における新しい予防と治療法の確立を目指す事を目的に研究を進めている。 平成25年度においてはTARSH遺伝子の肺癌細胞株、肺癌組織において発現抑制されるメカニズムの解析を中心に研究計画を実行し、TARSH の遺伝子発現機構の解析とともにTARSHとp53の発現の相関について解析を進めた。これまでにTARSH遺伝子プロモーター領域の同定、ならびにその領域に結合する転写因子の同定を含めた研究についてはUCSCゲノムブラウザでEncode クロマチン状態を元にTARSH遺伝子の発現制御能を担うと期待できる候補領域として2~3Kb領域を5領域選定した。今後はこの領域の選定基準を精査しつつ、レポーター解析により転写制御能領域が絞り込めれば、その領域を介して転写調節を行う因子と癌化の関連を探究していく。 一方、TARSHとp53の発現の相関についてはヒト肺癌部位(T)由来のcDNAサンプルを用いて同一正常部位(N)におけるTARSH遺伝子の発現抑制とp53の発現に相関があるかTaqManプローブを用いたリアルタイムPCR解析で検討した。現在までにTARSHとP53のT/N ratioは正の相関関係がある結果を得ており、特にP53の変異を考察したTARSHとP53の発現量を含めて引き続き解析を続けていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TARSHの発現低下が、単独であるいは他の癌抑制因子とともに、肺における発癌、あるいは癌の進行にどのように関与するのか否かを考察するマウスモデル(TARSH遺伝子欠失マウスを含む)の確保、TARSH遺伝子プロモーター領域の同定、ならびにその領域に結合する転写因子の同定を含めた研究について、研究協力員ならびに実験補助員の確保、やりくりに時間を要した点と解析そのものに慎重を取り組んだ点で多少の遅延が生じているが、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
TARSH遺伝子プロモーター領域の同定、ならびにその領域に結合する転写因子の同定に必要以上の時間を要した点については研究の方向性が拡大しないように細心の注意を払いたい。具体的には転写制御能を持つDNA領域の選定を進める上で制御領域を狭めることができれば、その領域を介しての転写調節因子の同定も容易になるので、癌抑制機能との関連を考える上でも有意義である。また、転写因子が同定できれば、転写因子を活性化できる方法を見いだすことでTARSH転写開始点上流の特定のDNA配列がどのようにTASRHの発現制御を担っていくのかを明らかにして成果としたい。さらに、ヒト肺癌抑制の予防や治療法の確立を目指すという観点からは、ヒト正常肺におけるTARSH分子の発現細胞の特定も癌抑制のメカニズムを考察する上では不可避な生理的意義と考えるので、本研究の延長線上には見据えておきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度にTARSH遺伝子欠失マウス(TARSH KO マウス)が本研究に使用することができる見込みであったが、その系統の確立に幾分の時間を要したので、その間に比較的使用経費の少ないTARSH の遺伝子発現機構の解析とともにTARSHとp53の発現の相関について解析を進めた。結果、解析の評価に想定以上の時間が掛かり正常肺細胞株と肺癌細胞株ゲノムより推定TARSH遺伝子プロモーター領域を単離、塩基配列を解析、ならびにアッセイ系の構築作業にも多少の遅延が生じたため、未使用額が生じた。 このため、26年度に肺癌細胞株あるいは確立できたTARSH KOマウス由来MEF、あるいは野生型マウス由来MEFにおいてp53の遺伝子発現制御とTARSH遺伝子発現、p53とTARSHあるいはABI3の発現と発癌の相関関係を解析することとし、未使用額はその経費に充当する予定である。
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Research Products
(5 results)