2013 Fiscal Year Research-status Report
被災者における高リスク群の同定:前向きコホート研究
Project/Area Number |
25670310
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
辻 一郎 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20171994)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 癌 / 社会医学 / 自然災害 / 地震 |
Research Abstract |
本研究において使用しているデータ(宮城県コホート研究)は、平成2年に宮城県内14町村に居住する40歳から64歳までの者全員(51,921人)を対象に生活習慣に関する質問票調査を実施し、有効回答者47,605人(91.7%)の生存・死亡状況(死亡原因)やがん罹患などを追跡しているものである。 本年度は、平成21年4月1日から同25年3月31日までの4年間の死亡状況を調査した。その結果、平成2年9月からの累計(22.5年間)で9,936人が死亡したことを確認した。そのうち、897人(9.0%)が平成23年3月の1ヵ月間だけで死亡していた。これは、調査対象地区が、河北町・北上町・女川町・唐桑町といった津波被害の甚大であった地区を含むためであった。たとえば、河北町では、累積死亡者1,157人のうち438人(37.9%)が平成23年3月に死亡した。同様に、女川町では累積死亡者1,200人のうち657人(54.8%)が平成23年3月に死亡した。 平成23年3月以降の5ヵ月間(平成23年4月~8月)の1ヶ月あたり平均死亡者数は63.2人であり、その1年前(平成22年4月~8月)のそれ(55.2人)より有意に多く、震災後長期にわたって過剰死亡が続いたことが示された。また、震災後の死亡率増加は沿岸部の町(前述)で顕著に見られた。 現在、厚生労働省および総務省に人口動態調査死亡票の閲覧を申請しているところであり、データを入手次第、死亡原因の調査に着手するものである。これにより、震災の前後で死因別死亡率に変化があったかどうか、さらに平成2年調査における生活習慣・心理要因(パーソナリティ)などと死亡リスク変化との関連を解析する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災の前から追跡を続けている地域住民コホートを使って、大震災の後で死亡リスクが増えたかどうかを解明し、その関連要因を検討することが本研究の目的である。すでに死亡者リストは収集し終え、震災後に死亡率が沿岸部被災地を中心に増加したことが分かった。現在、現在、厚生労働省および総務省に人口動態調査死亡票の閲覧を申請しているところであり、データを入手次第、死亡原因の調査に着手することを予定している。また、震災後の死亡リスク増加と関連する要因として、震災前の生活習慣や心理要因(パーソナリティ)などとの関連について解析を行うことを予定しているが、そのデータはすでにある。 以上のように、本研究は計画通り順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画の通り、以下の解析を行う。第1に、震災前後で死因別死亡リスクを比較することにより、震災後に増加した疾患を解明する。第2に、震災前の生活習慣・心理要因(パーソナリティ)などと震災後の死因別死亡リスクとの関連を解析する。その際、この関連が震災前と震災後とで変化したかどうかを検討する。第3に、これらについて地域別(沿岸部・内陸部)に解析する。 これらの解析結果に基づいて、生活習慣・心理要因と大規模災害後の健康との関連という観点から、震災以前の生活習慣・心理要因をもとにした、大規模災害後の疾病リスク増加を予防するために取るべき対策を提言し、研究室ホームページ、講演会、メディア報道、図書出版などを通じて研究成果を社会へ還元する。
|