2014 Fiscal Year Research-status Report
核DNA挿入ミトコンドリアDNA配列の解析を利用した法医年齢推定法の確立
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25670341
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
馬淵 正 山梨大学, 総合研究部, 助教 (80150308)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猩々 英紀 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (60284626)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミトコンドリアDNA / DNA挿入 / NUMTS / DNA二本鎖切断 / 非相同末端連結修復 / マイクロホモロジー / 年齢推定 / 法医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
法医学において身元不詳死体の年齢推定は重要な鑑定項目の1つである。しかし、DNA解析からのアプローチは年齢依存的に生じる点変異が解明されていないこともあり,現時点では困難な状況である。本研究課題では、進化の過程で染色体DNA上に挿入されたミトコンドリアDNA(mtDNA)配列(NUMTS; nuclear insertions of mitochondrial sequences)の生成機構(非相同末端連結修復)に着目して、酸化ストレス等時間依存的因子により世代内でもNUMTSが生じることを証明し、世代内NUMTSの選択的分析法を開発することで、DNA解析による法医年齢推定法の確立を目指している。当該年度では、本研究の当初計画の他に新たに計画した染色体上の部位特異的切断によるDNA組込み(挿入)系の構築に重点を置いて実験を行った。この方法により、染色体DNAに効率よく取り込まれるDNA断片(mtDNAを含む種々のDNA断片)の特徴を解明する。このため、ヒトゲノム上には存在しない制限酵素(I-SceⅠ)認識配列と、この部位が切断されたときのみに発現するマーカー遺伝子を染色体上に挿入した細胞株をFlp recombinase(FR)を用いて作製する。当該年度では、FR標的部位を染色体上に組み込んだヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞、ヒト胎児腎細胞由来HEK293細胞及びヒト上皮細胞由来HeLa細胞を作製した。この内、前2株についてはマーカー遺伝子の挿入まで行った。HeLa細胞については現在FR標的部位の挿入を行っている。今後、これらの細胞を用いて部位特異的に染色体DNA切断を誘導し、非相同末端連結修復時に組み込まれるDNA断片の解析を行う。一方、当初計画の培養細胞を用いた世代内NUMTS生成系を確立するための遺伝子改変ヒトmtDNAを受容する mtDNA欠損細胞の作製と、遺伝子改変ヒトmtDNAの構築については、現在進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題を迅速に遂行するため、新たに加えた染色体部位特異的切断によるDNA組込み(挿入)系の構築はほぼ順調に進行している。具体的には、部位特異的に染色体DNA切断を誘導するためのモデル細胞として、FR標的部位を染色体上に挿入し、続いてマーカー遺伝子を組み込んだSH-SY5Y細胞、HEK293細胞及びHeLa細胞を作製した。続いて染色体切断時のマーカーとしてmtEGFP遺伝子のFR部位への組み込みを行った。今後、I-SceⅠ遺伝子を導入、発現することで染色体部位特異的切断を誘導し修復時に取り込まれるDNAの解析を行う予定である。一方、当初計画の遺伝子改変ヒトmtDNAを用いた実験系による世代内NUMTSの選択的分析法に関しては、当初計画よりやや遅れている。現在、mtDNA欠損細胞の作製、遺伝子改変ヒトmtDNAの構築について進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに加えた実験計画において、当該年度に作成した部位特異的な世代内NUMTSの生成モデル系を使い染色体部位特異的切断実験を進める。このモデル系は、FR標的部位導入細胞中の染色体DNA上に制限酵素I-SceⅠ切断部位及びマーカー遺伝子を挿入した細胞を使用する。この細胞にテトラサイクリンで誘導されるI-SceⅠ遺伝子と共に、mtDNA断片を含めて種々の塩基配列を持つDNA断片を導入する。テトラサイクリンによりI-SceⅠを発現誘導し染色体DNAを部位特異的に切断後、修復された(世代内NUMTS生成候補)細胞のDNAを解析する。新たなDNA挿入部位の特異性及び共通性を検討しNUMTS挿入部位の特異性を明らかにする。一方、当初実験計画では、当該年度にひき続いて世代内NUMTSと進化上のNUMTSとを区別するため、染色体DNAに挿入されたときのみに蛍光を発するように変異を入れた緑色蛍光蛋白質GFP遺伝子を持つヒト改変mtDNAを構築する。続いて、mtDNA欠損細胞のミトコンドリア内へヒト改変mtDNAを導入する。この際、呼吸能の回復を指標にヒト改変mtDNA受容細胞を選択・単離する。次年度は最終年度に当たるため、ヒト改変mtDNA導入細胞に、年齢依存的因子である酸化ストレスを負荷することで二本鎖切断を誘導し、修復された細胞のDNA解析から新たに生じたNUMTSの挿入部位の特異性及び共通性の検討まで進めたい。
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Causes of Carryover |
申請時の培養細胞を用いた世代内NUMTS生成系の確立計画では、改変mtDNAを細胞内のミトコンドリア中へ導入するために,遺伝子銃の使用を予定していた。そのため、初年度に遺伝子銃購入のための物品費を請求した。しかし、交付額のみでは遺伝子銃の購入が困難となり、本研究課題遂行のため、実験方法の変更が必要となった。変更した実験方法では主に生物化学的手法を採用するため、研究期間を通して、継続的に試薬類の購入が必要となった。そこで、最終年度使用額を、上記理由により生じた試薬類等購入のための物品費に充てる計画である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は、上記の変更したミトコンドリア内遺伝子導入実験法による本研究課題の中心となる実験と新たに加えた実験計画を併行して実施する。そこで、上記理由により生じた最終年度使用額と平成27年度に請求した助成金とを合わせて、試薬類等購入のための物品費に使用する計画である。また、平成27年度に研究成果の一部を学会で発表する予定であり、旅費としても使用する計画である。
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Remarks |
山梨大学研究者総覧 http://erdb.yamanashi.ac.jp/rdb/A_DispInfo.Scholar/3_54/5D457B75EF4F7006.html
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