2013 Fiscal Year Research-status Report
摂食関連ペプチドは食後経過時間判定のための有用な指標となり得るか?
Project/Area Number |
25670344
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
近藤 稔和 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70251923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野坂 みずほ 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00244731)
石田 裕子 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10364077)
木村 章彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60136611)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 食後経過時間判定 / 摂食関連ペプチド / グレリン / レプチン / 中枢神経 / 脂肪細胞 |
Research Abstract |
法医実務において,食後経過時間判定は重要な鑑定事項である.しかし,これまで食後経過時間判定に関する法医学的研究は殆ど見受けられない.摂食は,消化管や脂肪細胞から分泌される摂食関連ペプチドが中枢に作用することによって制御されることから,摂食は中枢神経―脂肪細胞―消化管の相互連関によって制御される生体反応である.しかしながら,食後経過に伴う摂食関連ペプチドの動態は十分に解明されていない.そこで,本研究ではグレリンとレプチンに着目し,食後経過時間に伴うこれらグレリンとレプチンの動態を明らかにするとともに,これらの摂食関連ペプチドの動態が食後経過時間判定のための有用な指標となり得るか否かについて検討する. 8週齢のBALB/cマウス実験動物として用いて一晩絶食させた後,一定時間(15分)食餌を自由に摂取させた直後,15分,30分,60分,120分と経時的にマウスを安楽死させ,胃および腹腔内脂肪織におけるグレリンおよびレプチンの食後の経過時間に伴う各遺伝子発現の動態を検討した.摂食ホルモンであるグレリン遺伝子発現については,食前で最も高く発現していたが,食後経過時間とともに減弱した.一方,レプチン遺伝子の発現は,食前で最も低く,食後経過時間とともに増加傾向を認めた.すなわち,グレリンとレプチン遺伝子の発現は逆相関の関係であることが判明した.さらに,経時的に採取した胃および腹腔内脂肪組織について,グレリンおよびレプチンの各々免疫染色を行ったところ,遺伝子発現と同様に食前の空腹時でグレリン陽性細胞が最多であり,漸次減少傾向を認めた.しかし,レプチン陽性細胞については,食前では散在するだけであったが,食後経過時間とともに多数のレプチン陽性細胞を認めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では,摂食は中枢神経―脂肪細胞―消化管の相互連関によって制御される生体反応であることに着目して,摂食促進ホルモンであるグレリン,摂食抑制レプチンに着目し,食後経過時間に伴うこれらグレリンとレプチンの動態を明らかにするとともに,これらの摂食関連ペプチドの動態が食後経過時間判定のための有用な指標となり得るか否かについて検討したものである.グレリンとレプチンの遺伝子発現の検討については,胃および腹腔内脂肪組織から十分量のRNAが抽出でき,さらに各プライマー設計が適切であったことから,グレリンとレプチンの遺伝子発現検索については可能であった.さらに,免疫組織化学的にグレリンおよびレプチンの検索が可能であったことから,形態学的にもこれら摂食関連ホルモンの検索が可能であった.以上の結果から,摂食関連ホルモンの発現の動態に基づいて食後経過時間の推定の可能性が示唆されたからである.しかしながら,これら摂食関連ホルモンの動態を食後経過時間推定に実務応用するためには,血中グレリンおよびレプチンの濃度を測定することは必須であると考えている.さらに,法医学の対象はヒトであり,動物実験だけでは不十分であることから,ヒト試料による検討は必要不可欠である.また,死後経過時間に伴うこれら摂食ホルモンの値の変化についても検討が必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究計画を鋭意継続する.また,法医剖検試料では,死後変化は必ず遭遇する問題である.すなわちグレリンおよびレプチンの死後経過時間に伴う安定性の検討は必須である.そこで,摂食直後および15分,30分,60分,120分後にマウスを安楽死させた後,室温環境下で3時間,6時間,12時間,1日及び3日放置した後,胃および腹腔内脂肪織を採取して,上述のごとくリアルタイムRT-PCRによってグレリンおよびレプチンの遺伝子発現並びにグレリン/レプチン比を検討する.死後変化におけるグレリンおよびレプチン遺伝子の安定性を検討する.法医実務への応用的研究として,法医剖検例において,食後経過時間が判明している事例について,グレリンおよびレプチンは中枢に存在するレセプターに作用することから,心内血,末梢血に加えて,脳脊髄液を採取して,それぞれの検体についてグレリンおよびレプチン濃度を検索する.そして,各検体におけるグレリン/レプチン比を算出して,食後経過時間の関連性について統計学的解析を行い,グレリンおよびレプチンを指標とする食後経過時間判定法を樹立する.
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