2013 Fiscal Year Research-status Report
FGF23、及びαklothoを分子標的とした摂食―老化連関の解明
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25670358
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
森川 吉博 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60230108)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Klotho / FGF23 / 絶食 / 視床下部 |
Research Abstract |
① 絶食時の視床下部におけるαklothoの蛋白発現をウエスタンブロット法にて検討したところ、自由摂食群に比して絶食群においてαklotho蛋白の発現の有意な増加が認められた。そこで、視床下部のどのような核において、αklothoが絶食時に増加するのかを二重免疫組織染色法を用いて検討を行った。αklothoは弓状核において発現しており、その発現増加は弓状核においてのみ認められ、また、それらのαklotho 陽性細胞は、NPYやAgRP陽性の神経細胞であった。さらに、遺伝的レプチン欠損肥満マウス(ob/obマウス)の視床下部におけるαklothoの発現を検討したところ、野生型とob/obマウスの間でαklothoの発現に差は認められなかった。 ② 絶食時の視床下部におけるFGFR1, FGFR2, FGFR3, FGFR4の発現をウエスタンブロット法により検討したところ、いずれのサブタイプの受容体も絶食時の視床下部において発現が認められた。 ③ αklothoミュータントマウスのホモ接合型は、病的老化症状が強いため視床下部における機能解析は困難であるため、そのヘテロ接合型(αklothoヘテロミュータントマウス)を用いて自由摂食下と絶食24時間後、48時間後において解析を行った。体重や血糖値は、野生型とαklothoヘテロミュータントマウスの間で有意な差は認められなかった。また、視床下部における摂食関連分子(NPY, AgRP, POMC)の発現を免疫染色法により検討したところ、これらの摂食関連分子の視床下部における発現パターンに野生型とαklothoヘテロミュータントマウスの間で差は認められなかった。ところが、視床下部におけるSirt1の発現をウエスタンブロット法にて検討したところ、自由摂食下の視床下部において、野生型に比してαklothoヘテロミュータントマウスではSirt1の発現が有意に増加していた。絶食によりSirt1の発現は野生型では有意に増加したが、αklothoヘテロミュータントマウスではほとんど変化しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
αklothoは、絶食時に視床下部のNPY/AgRPニューロンで増加するという結果を得た。また、FGFR1, FGFR2, FGFR3, FGFR4のいずれのサブタイプの受容体も絶食時の視床下部において発現が認められた。αklothoヘテロミュータントマウスを解析し、体重や血糖値、視床下部における摂食関連分子の発現パターンが野生型と差が認められないことが明らかとなった。しかし、自由摂食下において、αklothoヘテロミュータントマウスの視床下部におけるSirt1の発現が野生型と比較して増加しており、野生型でみられた絶食によるSirt1の視床下部での増加は、αklothoヘテロミュータントマウスでは認められなかった。以上の結果より、平成25年度の研究実施計画は順調に遂行されており、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に実施した研究では、視床下部におけるSirt1の発現以外は野生型とαklothoミュータントマウスの間で差が認められなかった。αklothoミュータントマウス(klothoマウス)はこれまで老化研究などに頻繁に用いられているが、klotho遺伝子の単一遺伝子欠損マウスではない可能性がある。このため、αklotho単独の機能を解析するために、今後はklotho遺伝子の単一遺伝子欠損マウスであることが確認されているαklothoノックアウトマウスを用いる等の対策を講じる。 平成26年度は、まず、絶食時の視床下部においてαklothoの発現が増加していたため、そのリガンドであるFGF23の発現を検討する。自由摂食下と絶食時の血中FGF23濃度をELISA法により検討するとともに、絶食時の脳内におけるFGF23の発現量の変化と発現局在をウエスタンブロット法と免疫組織染色法を用いて検討する。 次に、in vitroで視床下部神経細胞にFGF23を処置し、視床下部における摂食関連分子の発現をウエスタンブロット法やリアルタイムPCR法により検討する。また、それらの遺伝子が実際に視床下部にて誘導されるのかをFGF23を投与したマウスの視床下部を用いて、ウエスタンブロット法やリアルタイムPCR法にて検討する。 また、klotho遺伝子の単一遺伝子欠損マウスであるαklothoノックアウトマウスなどを用い、自由摂食下と絶食下における体重や摂食量を検討するとともに、エネルギー代謝のパラメーターを解析する。また、自由摂食下と絶食下における血糖値や血清インスリン値を測定し、全身の糖代謝について検討する。さらに、視床下部における摂食やエネルギー代謝、糖代謝に関連した分子の発現をウエスタンブロット法やリアルタイムPCR法などを用いて検討する。
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