2013 Fiscal Year Research-status Report
脂肪性肝炎と遊離コレステロール毒性:新規調節因子の探索的研究
Project/Area Number |
25670365
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡崎 佐智子 東京大学, 医学部附属病院, 病院診療医 (30648720)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脂肪肝 / 脂肪毒性 / コレステロール / 炎症 / 分子標的 |
Research Abstract |
中性脂肪 (TG) やコレステロールエステル (CE) などの中性脂質が肝臓内に蓄積した病態が脂肪肝であるが、TG蓄積の病態に比べ、CE蓄積の意義は明らかではない。 単純性脂肪肝に炎症を伴うことにより、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、肝癌へと進展していくことから、炎症機転の分子機序の解明は重要である。 近年、脂肪肝の脂肪性肝炎への進展における遊離コレステロール (FC) の役割が注目されている。単純性脂肪肝の患者と比べ、脂肪性肝炎の患者では肝臓の FC 含量が高いことが分かってきたが、最近、肝臓における FC の蓄積が肝炎の原因となることが分かってきた。申請者はこれまで、マウスにおいて肝臓で CE を水解するリパーゼの研究を行ってきたが、その過程で、CE 水解活性を持つリパーゼの in vivo での肝臓での過剰発現が FC の増加と同時に致死的な肝炎を来す、という新たな発見をした。 そこで本研究課題では、まず申請者の予備的検討における in vivo で解明した結果に基づき、関連する新規分子の同定のスクリーニングに利用可能な in vitro 系を構築する。そして、この in vivo での all-or-nothing な系を in vitro 系に還元し、肝細胞は初代培養細胞と肝細胞由来細胞株では、脂質代謝機能が異なることが知られているため、どの細胞系が最も相応しいかのスクリーニングを行い、さらに shRNA による全ゲノムスクリーニングを応用し、FC 毒性による脂肪性肝炎に関わる新規分子群の同定を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者がこれまで行ってきていた in vivo でのメカニズムの追求も継続しているため、当初予定していた予備的検討の結果に基づく新規関連分子同定のスクリーニングに利用可能な FC 毒性による脂肪性肝炎の in vitro モデル系の確立の達成度においてやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、FC毒性による脂肪性肝炎の in vitro モデル系を確立するために、選択した細胞系において FC 毒性によるアポトーシスの詳細な検討を行う。 以上より確立した in vitro モデル系を用いて、レンチウィルスによる shRNA 全ゲノムライブラリーを用いた、loss-of-function スクリーニングを行う。 スクリーニング前の検討で、FC 毒性による脂肪性肝炎を制御し得る候補遺伝子が推定された際には、これらの候補遺伝子の shRNA を作成し、脂肪肝+HSL 過剰発現系あるいは脂肪肝+炎症刺激系におけるアポトーシスが、これら候補遺伝子群の shRNA により rescue されるか確認しておく。この実験により候補遺伝子のノックダウンによる細胞死の rescue が確認された際に、レンチウィルスを用いた shRNA 全ゲノムスクリーニング (二次スクリーニング) に進む。一次スクリーニングでは、予めコレステロールを蓄積させた細胞に、レンチウィルスを条件検討により決定した MOI で感染させ、一定時間後に、HSL のアデノウィルスを感染させる(あるいは炎症刺激を加える)。この処理後の生存細胞を pickup して継代し、ゲノムに組み込まれた shRNA コンストラクトを PCR とシークエンスにより同定、これらの遺伝子群が何であるかを同定する。二次スクリーニングでは、一次スクリーニングで得られた遺伝子群の個別の shRNA コンストラクトを作成し、個別のノックダウンによる機能解析を同じ細胞系において行う。 二次スクリーニングでも positive であった候補遺伝子の shRNA の組換えアデノウィルスを作成し、申請者が既に確立した in vivo 系、あるいは炎症による FC 毒性肝炎の系にこれを過剰発現し、機能解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の今後の研究の推進方策に沿った研究を進めていくため。 主な用途として、モデル動物のための動物維持費(約100万円)や細胞培養に必要な経費(約30万円)、キット・測定試薬等(約70万円)を予定している。
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