2013 Fiscal Year Research-status Report
造血幹細胞と共通した大腸がん幹細胞5-FU耐性分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
25670376
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
安永 正浩 独立行政法人国立がん研究センター, 臨床開発センター, ユニット長 (80450576)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大腸がん / 幹細胞 / 造血幹細胞 / 5-FU耐性 / SLC6A6 |
Research Abstract |
タウリントランスポーターSLC6A6の遺伝子ノックダウン大腸がん細胞株3種類と遺伝子強制発現細胞株1種類を作製した。SP(Side population)細胞がノックダウン細胞では著明に減少し、強制発現細胞では増加していた。さらに、5-FUの感受性がノックダウン細胞では増加して、強制発現細胞では低下していた。5-FUの感受性が100倍変化したHCT-15細胞のDNAマイクロアレイ解析を行い、造血幹細胞で強発現している20種類以上の共通遺伝子の存在を確認した。特に骨髄の造血幹細胞は5-FU耐性で知られ、歴史的にはSP細胞は造血幹細胞の特定方法或いは純化手段として開発された経緯がある。パブリックのデータベースから(1)骨髄のSP細胞と非SP細胞との比較、(2)大腸がん細胞で5-FU感受性が10倍異なる親株と娘株を比較したマイクロアレイデータを入手して独自に解析を行い、5-FU耐性に関与していると思われる造血幹細胞と大腸がん幹細胞に共通の遺伝子の絞り込みを行った。また、SLC6A6は7つの独立した研究機関の試料を基にしたデータベース解析結果からも大腸がん細胞に強く発現していることが示された。さらに、乳がんや膵臓がんでも高発現を認めた。同様に臍帯血由来の造血幹細胞やES細胞でも比較的高い値が示された。当初、特定のデータベース解析から骨髄の造血幹細胞にはSLC6A6は陰性と判断していたが、サーチの範囲を広げることによって、造血幹細胞においてSLC6A6が弱く発現しているか、一部の集団に強く発現している可能性も浮上してきた。そのため、SLC6A6が5-FU耐性に直接関与している可能性も否定できなくなった。今回絞り込んだ造血幹細胞と大腸がん幹細胞共通の5-FU耐性候補遺伝子と共に、SLC6A6自体に関しても再度解析を行う必要があると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウエットの研究は遅れているが、20種類以上の候補遺伝子の機能解析を短期間で行うのは現実的ではなく、ドライの研究としてパブリックデータベースを中心としたビッグデータを活用することで、合理的かつ能率的に本研究を進めることができるものと判断した。自己の実験結果を複数の他施設で行われたマイクロアレイデータの解析結果とも照らし合わせることができるので、研究精度や結果の正確性の向上にもつなげることができると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
SLC6A6自体が直接的に5-FU耐性に強く関与しているか否かを第一に明らかにしなくてはならない。5-FU系薬剤を開発している製薬企業と連携して、複数の5-FU耐性大腸がん細胞株でSLC6A6ノックダウン細胞を樹立して、5-FU耐性解除能を検討する。SLC6A6以外で造血幹細胞と大腸がん幹細胞に共通な遺伝子に関しては、10-100倍(可能であれば100倍以上)5-FU感受性が異なる大腸がん細胞株(親株と娘株)に関してDNAマイクロアレイ解析を行い、候補遺伝子を少数に絞込み、ノックダウンと強制発現による機能解析で同定を試みる。
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