2013 Fiscal Year Research-status Report
心筋におけるミトコンドリア融合阻害の病態的意義の解明
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25670387
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中山 博之 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (40581062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新谷 紀人 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (10335367)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 心不全 |
Research Abstract |
ミトコンドリア内膜融合阻害因子(Mitochondrial Innermembrane Fusion Inhibitor, 以下MIFI)の心筋における役割を明らかにする事を目的に研究を進めた。MIFIの発現は圧負荷モデルマウスにおいて低下した。心筋特異的MIFI過剰発現マウス(MIFI-TG)を作製し3ラインを得た。MIFI-TGは生理的条件下において心エコーを用いた評価による心機能の変化や心重量の増大等の心肥大の増悪は認めなかった。さらに電子顕微鏡を用いたミトコンドリアの観察を施行したが、明らかなミトコンドリアの断片化の所見は観察されなかった。また心筋のストレス分子マーカーであるANFの発現にも差を認めなかった。MIFI過剰発現の病態的意義を明らかにするために、大動脈縮窄術を用いて圧負荷に対する反応を評価したところ、心肥大反応の増悪と心エコーによる左室内径短縮率の低下を認め心不全の増悪を認めた。さらにANFとI型コラーゲンの有意な上昇を認め、分子マーカー的にも心肥大と線維化の増悪がMIFI-TGにおいて示唆された。また過酸化脂質マーカーである4-HNEの染色により酸化ストレスの亢進が明らかとなった。以上の結果より、MIFIの心筋特異的過剰発現は生理条件下においては有意な病態は惹起しないが、圧負荷ストレスに対しては、病態を増悪させる方向に働き、その機序に酸化ストレスが関与している事が示唆された。 またさらに心筋細胞レベルにおける解析を進めるべく、MIFIのアデノウィルスベクターを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、生体におけるGain-of-function研究は、①解析すべきラインが確立され、タンパク質の発現が明確に確認できていること。 ②生理条件科下において、心機能に影響をおよぼさない事 ③ストレス時に病態を増悪させること の以上の重要な3点が確認された事より解析の重要なステップはクリアできている。現在、ミトコンドリアの断片化が生理条件下において確認できていない点が、唯一の問題点であるが、今後、病態の増悪を認めている圧負荷心において電子顕微鏡を用いた解析を進めていく事により、心筋でのミトコンドリア断片化におけるMIFIの意義が明らかになると予想している。 現在はGain-of-function研究に焦点をあてており、Loss-of-function研究に関しては、現在キメラマウスの作製を進めている段階である。細胞レベルの実験においては、アデノウィルスの作製をすすめている。以上を鑑み、概ね順調に経過していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、以下の如く研究を推進する。 ①心筋特異的MIFI過剰発現マウスによるGain-of-function研究は、①圧負荷後の病態増悪の機序②他の心病態モデルにおける意義の解析の2点を中心に解析を進める。前者においては、MIFI過剰発現後の圧負荷心におけるミトコンドリアの形態と機能の解析を中心に実験を遂行する。さらに、他の機序についても探索的アプローチを進める。後者においては、心筋梗塞モデルと加齢モデルを用いた解析を進めていく。 ②生体におけるLoss of function研究については、ノックアウトマウスの作製を引き続き進める。KOMPより購入したMIFI遺伝子をLac-Zと置換したES細胞を用いて、キメラマウスを作製しライン確立をめざす。 ③細胞実験に関して、作製したアデノウィルスを用いて心筋細胞におけるミトコンドリアの形態変化の解析をすすめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
過剰発現マウスのストレス負荷後の電子顕微鏡解析のための費用および遺伝子欠失マウス作製の遅れによる動物飼育費用が減少したことより182945円の次年度使用額が生じた。 次年度使用額については、主として電子顕微鏡解析費用と遺伝子欠失マウスの作製のための飼育費として使用する予定である。
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[Presentation] 新規ミトコンドリア融合阻害因子MIFIの心筋特異的過剰発現マウスを用いた生理・病態機能解析2013
Author(s)
開 菜摘, 新谷 紀人 , 東 信太朗, 舎川 洸太, 中山 博之, 藤尾 慈, 井上 直紀, 田中 翔太, 笠井 淳司, 早田 敦子, 馬場 明道, 橋本 均
Organizer
第124回日本薬理学会近畿部会
Place of Presentation
京都ガーデンパレス(京都)
Year and Date
20131101-20131101