2013 Fiscal Year Research-status Report
ナノ粒子薬物送達システムによる、アルツハイマー病の酸化ストレス消去療法の開発
Project/Area Number |
25670416
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
冨所 康志 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80447250)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉岡 晃 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50192183)
石井 一弘 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (70323293)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | アルツハイマー病 / アミロイド / 治療 |
Research Abstract |
共同研究で開発した活性酸素消去能力を有するナノ粒子薬物送達システムを臨床展開し、発症前ないし軽度認知機能障害の段階の超早期のAlzheimer病(AD)の患者における認知症発症抑制法の開発を推進するための基礎的検討を開始した。ラジカル補足剤を導入したレドックスナノ粒子(RN粒子)の合成を一部行った。アミロイド沈着と学習記憶障害を示す遺伝子改変動物Tg2576 rd1を輸入・飼育する準備を行い、共同研究者らが平成26年度初頭から飼育を開始した。今後、同動物について、陰性コントロール群と並行してRN粒子の投与と記憶障害の評価を行う。Tg2576 rd1脳内へのアミロイドβ蛋白(Aβ)の沈着を待って、Tg2576 rd1脳の組織学的検討と、蓄積したAβ-(1-40)やAβ-(1-42)といったAβのELISAによる定量のほか、免疫組織学的ならびに生化学的手法による毒性Aβコンホマー量の比較検討を行う予定である。先行研究では生体試料に含まれる毒性Aβコンホマーの評価法は確立しておらず、我々のパイロット的検討で示唆された毒性Aβコンホマーの評価法を確かなものとするため、ヒトAD患者剖検脳や生体試料を用いて、特異抗体を用いた免疫組織学的検討と、生化学的評価法について検討した。毒性Aβコンホマーに対する特異抗体の反応性は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)によってそのほとんどが失われ、通常のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの方法のみでは評価できないことを見いだした。特異抗体による免疫沈降法とSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法の組み合わせによる可溶性Aβに対する評価方法を確立した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題申請時には、本研究に使用する家族性アルツハイマー病の原因となる変異APPを過剰発現するアルツハイマー病の遺伝子改変モデル動物であるTg2576を全て購入する計画を立案し、申請を行った。採択時の予算の縮小に伴い、補助金交付申請の際に、Tg2576を輸入しコロニーを確立する様、急きょ計画を変更したが、その後、供給元から繁殖の最終的な許可が得られなかった。そこで、Aβアミロイド沈着と学習障害を生じる別のアルツハイマー病遺伝子改変モデル動物への代替えや、Tg2576を家族性アルツハイマー病原因となる他の変異遺伝子(PSEN-1またはPSEN-2)を発現するアルツハイマー病病変促進マウスと交配して繁殖することについて検討を行った。その後、候補となった入手可能な複数の代替え動物について、アルツハイマー病に相当する脳の変化がTg2576に比べても予想より軽度であることが判明し、本研究での使用には適当でないと考えられた。このことは補助金交付申請時には動物供給元からの情報や文献からは予想困難であった。また、当初から候補としていたTg2576については、供給元と交渉を行ったが繁殖許可が得られなかった。他の動物との交配で得られた子孫に限っては繁殖が許可されたが、致死率や認知機能障害などの理由によりTg2576とPSEN-1変異マウスやPSEN-2変異マウスとの雑種の確立が難しく、変異APPと変異PSENという複数の改変遺伝子を同時に発現する動物を自ら確立するには年単位の時間が必要であることが判明した。そこでやむなく、最終的には使用する動物をTg2576 rd1と再選定し、必要数を全て輸入することとした。もともとは平成25年度末に動物の飼育を開始する予定であったが、以上のような検討や交渉のため、遺伝子改変動物の輸入が申請時の計画に比べて遅れた。
|
Strategy for Future Research Activity |
Tg2576 rd1マウスに対して、レドックスナノ粒子の投与を開始する。陰性コントロールや薬剤コントロールも用意する。定期的に、学習障害の有無と程度を評価する。アミロイド沈着に始まるアルツハイマー病病変が出現し個体差が少なくなる月齢に達した時点で、解剖を行い、脳をAβやタウ蛋白、シナプトフィジンやドレブリンなどといった前・後シナプス蛋白、グリアに対するマーカーなどに対する免疫組織学的手法やH&E、チオフラビン染色などの古典的組織学的手法、ELISAによるAβの定量やウエスタンブロット法などの生化学的手法により、アミロイドの沈着・蓄積や二次的なタウ病変の進行や、炎症反応やミクログリアの増生などが抑制されているか検討する。毒性Aβコンホマーについて質的量的差が生じていないかについても、昨年度に確立した手法により比較検討する。 現時点での研究の遅れは、遺伝子改変動物の輸入までの段階で生じたものであり、上述の検討内容において支障が生じたものではない。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【現在までの達成度】にて詳細に述べたように、補助金交付申請時には、家族性アルツハイマー病の原因となる変異APPを過剰発現する、アルツハイマー病の遺伝子改変モデル動物であるTg2576を輸入しコロニーを確立する予定であったが、供給元から繁殖の最終的な許可が得られなかった。研究に使用するマウスの納入業者との交渉やマウスの再選定を試みざるをえなくなったため、一部実験に計画より数か月程度の遅れが生じた。マウスは平成25年度の後半に輸入し、それに合わせて初年度に大量の物品を購入するように年次による強い傾斜配分を行っていたため、次年度差額が大きくなった。 当初の予定に比べて遅れたものの、現在既に本研究で使用するマウスの飼育が行われ、薬物投与と学習障害の評価が予定されている。動物の加齢後に、動物の脳に生じたアルツハイマー病に対応した変化を、当初の計画どおり、免疫組織学的、ならびに、生化学的検討により評価する予定である。次年度使用額の多くは、これらの評価に使用する特異抗体や、ELISAキットなどの購入費として使用する。学術集会などへの参加や成果発表、ならびに情報収集も予定通り行う。
|