Outline of Annual Research Achievements |
再生不良性貧血発症の初期段階に関与するサイトカインを同定するため、未治療・未輸血で後にシクロスポリン療法によって改善したPNH型血球陽性骨髄不全(非重症再生不良性貧血5例、巨核球減少性血小板減少症3例)と、患者の年齢層に近い健常者5人の末梢血を対象として、アジレント社のDNAチップを用いてマイクロアレイ解析を行った。その結果、患者検体において特に発現が顕著は遺伝子として、HBBP1, CA1, DNAJB13, THEM5, REEP1, SPTBN4, C10orf82, CORT, COL26A1、発現が低下している遺伝子としてMFAP3L, FCER1A, GNAZ, CLC, CCR3, CLDN5, SMPD3, SDPR, HGD, RHOBTB1が同定された。パスウェイ解析では、IL10, miR-483-3p, mir-10, mir-1, CXCL12に関わるパスウェイが活性化されていることが示された。これらの遺伝子群やサイトカインが、シクロスポリンに対する高反応性にどのように関与しているかについては現在検討を進めている。 一方、抗胸腺細胞グロブリンやシクロスポリンによって寛解となったPNH型血球陽性患者12例を対象とした全エクソーム解析では、ASXL1, BCOR/BCOR1, DNMT3A, PIGA, RUNX1, U2AF1, TET2, ITGA1, JAK2などの骨髄異形成症候群でしばしば検出される遺伝子の変異が認められた。また、造血調節に関わる可能性がある遺伝子の変異としてPEG3, SMARCA2, LRCH1などが同定されたが、これらはいずれも複数症例で重複する異常ではなかったため、意義付は困難であった。エスケープ造血に関与するサイトカイン関連遺伝子の変異は同定できなかったため、現在は、6pUPD陽性幹細胞のクローン性造血に関与する遺伝子変異の同定を試みている。
|