2013 Fiscal Year Research-status Report
2種の抗血栓因子を用いた血管内皮細胞の可視化と発現解析を可能とするマウスの作製
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25670454
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
宮田 敏行 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (90183970)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂野 史明 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (00373514)
田嶌 優子 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (10423104)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | トロンボモジュリン / 血管内皮細胞プロテインC受容体 / トランスジェニックマウス / トランスクリプトーム解析 / Bac-TRAP / ライブイメージング |
Research Abstract |
これまでの多くの研究から、血管内皮細胞では動静脈や組織部位による不均一性が指摘されているが、その実態は不明の点が多い。本研究では、血管内皮細胞に発現する2種の抗凝固タンパク質、トロンボモジュリン(TM)と血管内皮細胞プロテインC受容体(EPCR)を用いて、内皮細胞を蛍光標識しライブでイメージングを行い、かつ細胞内で翻訳中のmRNAのトランスクリプトーム解析を行なう。このため、Bacクローンを用いたTM遺伝子プロモーターおよびEPCR遺伝子プロモーターの制御下で、蛍光タンパク質とリボソームタンパク質L10aの融合タンパク質を発現するトランスジェニックマウスを作製する。これらのマウスを用いて時間軸および臓器特異性を考慮した動静脈での血管内皮細胞の不均一性を解析する。このため、研究の1年目にTM遺伝子およびEPCR遺伝子のプロモーターの下流に蛍光タンパク質GFPとリボソームタンパク質L10aの融合タンパク質EGFP-L10aをコードする cDNAを組み入れたBacベクターを構築し、TM-Bac-TRAPおよびEPCR-Bac-TRAPマウスを作製した。TM-Bac-TRAPマウスは6コピーが挿入されていた。EPCR-Bac-TRAPマウスは1コピー、2コピー、15コピーが挿入された3ラインを樹立した。これらを掛け合わせ12コピー挿入TM-Bac-TRAPマウス、および30コピー挿入EPCR-Bac-TRAPマウスを樹立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ロックフェラー大学のHeintz教授らが開発したBAC-TRAP法 (Cell, 2008)を用いて、血管内皮細胞を蛍光標識し、かつ細胞で翻訳中のmRNAのトランスクリプトーム解析を行う。Heintz教授からEGFP-L10a融合タンパク質をコードするDNAが挿入された組換えベクター(S296.EGFP-L10a)とRecAベクター(pSV1-RecA)を恵与された。マウスTM遺伝子およびマウスEPCR遺伝子を含むBacクローンを持つ大腸菌は購入した(ダナファーム社)。Bacインサート両端とTM遺伝子およびEPCR遺伝子のシークエンスを確認し、遺伝子のATG直前の配列(開始ATG直前の552 bp)をPCRで増幅後、組換えベクターのEGFP-L10a融合タンパク質をコードするDNAの直前に挿入し、組換えベクター(S296.TM-EGFP-L10a, S296.EPCR-mCherry-L10a)を作製した。次いで、Bac含有大腸菌に組換え酵素RecA発現ベクターをCaCl2法で導入し、この大腸菌に組換えベクターをエレクトロポレーション法で導入した。5’ 側および3’側の組換え部位でPCRを行うなどの方法で、マウスTM遺伝子直前にEGFP-L10aおよびマウスEPCR遺伝子の直前にmCherry-L10aが挿入されたBac DNA(TM-EGFP-Bac-TRAP, EPCR-mCherry-Bac-TRAP)をもつ大腸菌をスクリーニングし単離した。 次いで、約500個の受精卵にBac DNAをマイクロインジェクションした。F0でPCR法を用いて遺伝子が挿入されたことを確認後、F1マウスを使ってサザン解析を行いコピー数を算定した。その結果、1ラインのTM-EGFP-Bac-TRAPトランスジェニックマウス(6コピー挿入)および6ラインのEPCR-mCherry-Bac-TRAPトランスジェニックマウス(13コピー、2コピー、1コピー挿入の3ライン)の作製に成功した。これらのマウスをBac-TRAPマウスと呼ぶ。本年度の計画は、TMおよびEPCRのBac-TRAPトランスジェニックマウスの作製が目標であったので、この目標を到達することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
肺はTMが高発現し、動脈はEPCRが高発現すると報告されている。そこで、TMおよびEPCRのBac-TRAPマウスの肺と動脈からそれぞれライセートを調製し、抗GFP抗体および抗mCherry抗体を用いて免疫沈降し、EGFP-L10aもしくはmCherry-L10a含有リボソームと翻訳中のmRNAを含むポリソームを回収する。回収したポリソームからmRNAを精製し、GeneChipシステム(国立循環器病研究センターに設置済み)を用いて翻訳遺伝子を網羅的に解析する。これにより、Bac-TRAPマウスを用いた翻訳遺伝子プロファイルのシステムが完成する。 TMおよびEPCRの発現部位は免疫染色法で検討されているが、発生期での発現は検討されていない。生体での検討も十分ではない。そこで、平成25年度に得られた結果を基にして、TM-Bac-TRAPマウスおよびEPCR-Bac-TRAPマウスの利点を活かし、胎児ホールマウントや成体各組織切片のEGFPおよびmCherryの蛍光観察により、EGFPおよびmCherry産生細胞を特定する。EGFP(すなわちTM)およびmCherry(すなわちEPCR)発現がみられた細胞(組織)については、抗GFP抗体と抗mCherry抗体を用いた免疫染色とウエスタンブロットを行い、結果の再現性を確認する。次に、深部組織を観察可能な2光子励起共焦点顕微鏡(国立循環器病研究センターに設置済み)を用いて、血管でのTMおよびEPCR発現量の変化をin vivoでライブイメージングする観察系を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究は順調に進展し、当初の予定通りにTM-EGFP-Bac-TRAPトランスジェニックマウスおよびEPCR-mCherry-Bac-TRAPトランスジェニックマウスを作製した。この間プラスティック製品や試薬などの消耗品の節約に努め、年度末には経費を次年度に持ち越すことができた。次年度は、トランスジェニックマウスの機能解析のために、最も重要な実験を行う。持ち越した研究経費は、次年度に組織染色やジーンチップでの遺伝子発現解析研究などに有効に使用する予定である。 Bac-TRAPトランスジェニックマウスでのEGFP(すなわちTM)およびm-Cherry(すなわちEPCR)の発現を検査するため、胎児ホールマウントと成体各組織切片の抗GFP抗体を用いた免疫染色を行う。蛍光観察も行う。これらの実験に必要な消耗品を購入する。組織染色は専門の業者に外注する予定である。TMとEPCRを発現する組織のライセートを調製し、抗GFP抗体もしくは抗m-Cherry抗体を用いた免疫沈降により、EGFP-L10a含有リボソームと翻訳中のポリソームを回収し、GeneChipシステム(アフィメトリクス社、設置済み)を用いて発現細胞内の翻訳遺伝子を網羅的に解析する。こういった実験に必要な消耗品を購入する。情報収集・研究結果の発表のため、国内学会の旅費を支出する。複数のBac-TRAPトランスジェニックマウスラインの維持と管理に研究費を支出する。
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Research Products
(7 results)