2014 Fiscal Year Research-status Report
マイクロインジェクションによるRIの細胞内局所注入および細胞内局在制御技術の開発
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25670543
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
大島 康宏 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究員 (00588676)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マイクロインジェクション / RI / 細胞内局在制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はマイクロインジェクションによるRI標識抗体の細胞内注入及び細胞内局在制御技術確立のため、平成26年度はマイクロインジェクションによる細胞侵襲性、細胞内注入量を検討し、更に64Cuを使用したRI標識抗体の合成を行った。細胞侵襲性は、リン酸緩衝液に溶解したfluorescein isothiocyanate (FITC、100 μg/ml)をKYSE30細胞に注入後、細胞形態を継時的に観察し、全注入細胞数に対する正常細胞数の割合を算出した。その結果、注入から9時間経過後における正常細胞数の割合は89.9%(n=59)となり、約10%の細胞侵襲性が認められた。細胞内注入量は、これまでに申請者が使用するマイクロインジェクションシステム(エッペンドルフ社製)又はこれに類似したシステムを用いた注入液量測定の前例がないため、本研究では新たに化学発光によるAdenosine triphosphate (ATP) の高感度測定法を応用した測定法を考案し、測定を試みた。具体的には、ATP(100 mM)を10μlの超純水中に注入し、10μl中のATP濃度をluciferin-luciferase法によって測定後、ATP濃度の希釈率から注入液量を算出した。その結果、注入量は24.1±14.1 pl/回であった。この体積は1細胞体積に比べ非常に高い。FITCの注入時、針先からFITCの漏出が観察される場合があったことから、ATPの漏出が高値の原因であると考えられる。今後、蛍光色素とATPとを混合し、針先からの漏出が無いことを確認した後に注入を行うことで、正確な注入量の測定を行う予定である。64Cuを使用したRI標識抗体の合成は、二官能性キレート薬であるDOTAを結合させた抗体を調製した後、64Cuを標識した。その結果、標識率54.7%で64Cu標識抗体を合成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究の達成度が遅れてしまっている理由として、調製した蛍光標識抗体がガラスキャピラリー先端に詰まってしまう事例が多数発生し、蛍光標識抗体の細胞内注入を思うように実施できず、蛍光標識抗体の細胞内分布の経時的変化や注入する蛍光標識抗体の濃度に依存した蛍光輝度値の変化等について検討できていないことが挙げられる。蛍光標識抗体は標識反応後リン酸緩衝液を使用して余分な蛍光色素を洗浄・除去し、溶液中に存在する微粒子を除くため、孔径0.22μmのフィルタを用いたろ過精製を行い、更に15,000g、20 minの遠心分離を行ったものの上清を注入用サンプルとした。そのため、ガラスキャピラリー先端が詰まる原因として、注入用サンプルの冷蔵保管中に蛍光標識抗体もしくは分解により生じた蛍光色素等が凝集体を形成し、ガラスキャピラリー先端に詰まった可能性が考えられる。孔径0.22μmフィルタろ過による精製は注入用サンプルの損失につながるため、細胞内注入実施前の遠心分離によって凝集体を沈殿させることで改善を図る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方針として、先ず研究遂行の妨げとなっている蛍光標識抗体のガラスキャピラリー先端における詰まりの解消に取り組む。その後、蛍光標識抗体の細胞内注入後の経時的な細胞内分布の変化や細胞内に注入する蛍光標識抗体の濃度に依存した蛍光輝度値の変化、細胞内注入液量について検討し、RI標識抗体を細胞内注入した際のRI注入量やRIの細胞内分布の変化を予測するための基礎データを得る。蛍光標識抗体による基礎データの収集が終わり次第、RI標識抗体の合成及び細胞内注入に移行する。平成26年度に確立した方法を用いて64Cu標識抗体を合成した後、細胞内注入を行い、細胞内の放射能をガンマカウンタで測定する。これにより細胞内へのRI注入を確認し、注入RI量の実際値を求め予測値と比較する。以上の検討が終了した後、RI標識抗体を細胞内局在させた場合の放射線バイスタンダー効果の有無について検討する。マイクロインジェクションは注入成功率や注入量のバラツキ、細胞侵襲性等の面で実験者の技術に依存する点があるため、マイクロインジェクション技術の向上にも引き続き取り組む。
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Causes of Carryover |
予定通りに研究が進んでおらず、当初予定していた以上に蛍光標識キットや抗体、その他消耗品等が必要となった。次年度の研究を遂行する上ではこれらの試薬等が必要不可欠であり、次年度の必要経費の配分等を考慮し、購入予定としていた設備備品(遮蔽用鉛板)の購入を取りやめた結果、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は蛍光標識抗体の調製及びRI標識抗体の調製を実施するため、主として蛍光標識用キット、抗ヒストン抗体、抗アクチン抗体を購入する。その他、マイクロインジェクションおよび細胞培養に必要な消耗品の購入に使用する。また、本研究で得られた成果については学会発表および英文誌への投稿を予定しており、その参加費、旅費、雑誌投稿のための英文校閲費、雑誌投稿料に研究費を充当する予定である。
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