2013 Fiscal Year Research-status Report
ナノキャリアと放射錯体化学を駆使したがん超選択的内用療法の開発
Project/Area Number |
25670546
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
梅田 泉 独立行政法人国立がん研究センター, 臨床開発センター, ユニット長 (40160791)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 内用療法 / リポソーム / イットリウム90 / 錯体化学 / 核医学 |
Research Abstract |
薬物担体のひとつであるリポソームは、大量の放射性核種を封入でき、かつ高い腫瘍集積性を持つことから内用療法への応用が期待される。しかし従来の放射性核種錯体封入リポソームでは放射活性が非特異的に網内系に停留した。そこで網内系からのクリアランス促進を目的として、リポソーム封入核種に対する配位子の検討を行った。治療にはY-90を用いる予定であるが、本年度はY-90と化学的性質が類似するIn-111を用いて緒検討を進めた。配位子としてDOTA、DTPA、NTA、ECを用い、リポソーム内でのIn錯体形成をODS-HPLCで分析した。ECは一般にTc-99mに対する錯体として知られるが、In-111とも錯体を形成してリポソームに封入できることが明らかとなった。他三種でもリポソーム内での錯体形成が確認できた。これら錯体封入リポソームをsarcoma180担がんマウスに投与して、体内動態を比較した結果、EC錯体を用いた場合のみに網内系からの大幅なクリアランス促進が認められた。In-111-EC錯体封入リポソームを投与した場合、体内からの放射活性消失も他3種より有意に早く、また尿の分析からIn-111-EC錯体の形を保ったまま尿中に排泄されることが明らかになった。ECの優れた特性が認められたことから、次にIn-111をY-90に替えて実験を行った。Y-90はγ線を出さず、HPLC分析が難しかったことから、まず担がんマウスでの体内動態を検討した結果、Y-90の場合はECを用いても網内系クリアランス促進は認められなかった。原因としてY-90とECの錯体が形成されないか、不安定であることが推定された。そこで現在、Y-90と安定な錯体を形成し、かつECと同様に迅速に排泄される配位子を、ECを土台に設計・合成している。さらに、DTPAなどの構造修飾で同様の効果を得るべく分子設計を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ナノキャリアを用いた内用療法で問題となる腹部正常組織への放射活性分布を、キャリア側ではなく、核種-配位子錯体の制御によって低減する試みであり、他にはない試みである。本年度は、複数の配位子の比較から、目的に必要な配位子の条件を求めた。ECのように、いったん捕捉された後に血中に戻る性質とともに、用いる放射性核種とリポソーム内で安定な錯体を形成することの2点を同時に満たす必要性を明らかにでき、これを土台として新しい配位子の合成に取りかかっている。現時点では未だ目的に適した配位子は得られていないものの、研究の進捗は概ね順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進めている新規配位子候補化合物の合成を引き続き実施する。完成後それらの物理的性質等を評価し、リポソームに封入する。リポソーム封入状態についても評価を加えた後、担がん動物を用いた検討を行う。並行して関与するトランスポータ等、機序の解析を実施し、POCを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は25年度からY-90を用いた検討を始める予定であったが、測定の感度や汎用性、短半減期で高額であることなどの点で、多くの実験を実施するには不向きであることがわかり、化学的性質の類似するIn-111での検討を先行させた。Y-90での実験は26年度に実施予定であり、その購入費用を繰り越した。また、トランスポータ検討も26年度に繰り下げたため、同様に試薬購入費用を繰り越した。 主に物品費(上記物品を含む)としての使用を予定する。放射性物質、実験動物、試薬、器具等、実験用消耗品の購入に充てる。また、実験補助のための謝金、成果発表のための旅費等の使用を予定する。
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