2013 Fiscal Year Research-status Report
異種移植における拒絶反応克服の治療戦略-異種細胞の同種細胞への置換の試み-
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25670554
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上本 伸二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40252449)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肝移植 / 異種移植 / 拒絶軽減 / 細胞置換 |
Research Abstract |
我々の想定するモデルでは、骨髄移植から肝移植までの期間に肝移植ドナーにGVHDや拒絶反応の発症が予想されるため、その期間は短い方が望ましいと考えた。そこで、ラット間の急性拒絶肝移植モデルを用いて、骨髄細胞移植から肝移植までの期間を1ヶ月から1週間に短縮し、肝移植後の拒絶反応の軽減効果について検討した。その結果、1週間のモデルでも1ヶ月のモデルと比較して生存期間の延長は同程度である事が判明した。次に1週間のモデルを用いて移植した骨髄細胞の肝グラフト内での生着を評価した。骨髄細胞は肝類洞腔に生着しており、内皮細胞の指標としてCD31を、Kupffer細胞の指標として CD68を用いて免疫染色を行ったところ、移植した骨髄細胞はCD68陽性細胞と一致した。Kupffer細胞の機能を抑制する為に肝移植前日に塩化ガドリニウムを肝移植ドナーに投与した所、肝移植後の生存期間の延長効果が消失した。この事から移植した細胞はKupffer細胞に分化している事が分かった。 肝臓を構成する細胞としては肝細胞の他に、内皮細胞、胆管上皮細胞、Kupffer細胞、星細胞などがあるが、この中で拒絶のターゲットとして重要なのは、内皮細胞と思われる。残念ながら今回の実験モデルでは内皮細胞は置換されず、Kupffer細胞が置換されていた。しかし近年、ブタ由来のKupffer細胞がヒトのglycophorin A上にあるsialic acid motifを認識し赤血球を破壊するという報告がなされている(Brock LGら Am J Transplant 2012)。この観点から考えるとKupffer細胞の置換は異種移植を想定した場合、有用である事が期待出来る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異種モデルでの検討に先立って、同種強拒絶モデルを用いて移植骨髄細胞の詳細な評価を進めた。その結果、骨髄細胞移植によって内皮細胞は置換されず、Kupffer細胞が置換している事が判明した。 内皮細胞の置換は、異種臓器の拒絶反応軽減に大きく寄与すると期待している。そのため内皮細胞置換の為の新たな実験モデルを検討する必要がある事が判明した。 また、Kupffer細胞の置換は上述の通り、異種移植において有用となる可能性がある。今年度得られたKupffer細胞の置換による拒絶反応軽減という結果は、このモデルを異種間で検討していく強い根拠となると考える。 異種モデルでの検討のための準備についても並行して進めており、来年度には実験を遂行出来ると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた結果を踏まえて、マウスーラット間で異種間の骨髄細胞移植を行う。移植した骨髄細胞の生着が得られるか、今年度得られた結果と同様にKupffer細胞として生着するのか、さらに異種肝移植モデルを用いて拒絶反応の軽減が得られないかについて検討を進める。 また、今年度行った骨髄細胞移植のモデルでは、内皮細胞の置換は得られない事が判明したため、モノクロタリンによる類洞内皮傷害などを追加して、移植した骨髄細胞が肝グラフト内で内皮細胞へと分化し傷害を受けた内皮細胞を置換しないか、そして肝移植術後の拒絶反応の軽減が得られないかについても並行して検討していく。
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