2013 Fiscal Year Research-status Report
大動物モデルによる高圧下における不凍結超低温域に着目した新たな臓器保存法の開発
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25670557
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
山田 和彦 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 教授 (40241103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐原 寿史 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 特任准教授 (90452333)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 移植・再生医療 / トランスレーショナルリサーチ / 高圧 / 臓器保存 / ミニブタ |
Research Abstract |
高圧下では液体を不凍結状態に保つことが可能であり、長期間の臓器保存に適した低温状態を維持しうる可能性がある。新しい臓器保存法の開発を目指した前臨床研究の第一歩に着手し、平成25年度は、高圧条件下の実質臓器の機能変化を評価するため、腎臓に焦点をあてた評価を開始した。 4例に対し、容器内で以下の高圧(低温)負荷をかけた後、直ちに自家移植手技によって自己体内に戻し、腎臓の機能を評価した。対側の腎臓は摘出し、高圧負荷腎臓のみでの機能評価とした。(1)60MPa/(-3.7℃あるいは-4.2℃)の負荷では腎臓は障害を受けないことを移植前の病理検査で確認した。さらにこの高圧負荷をした腎臓を自家移植により元の個体に戻し、高圧負荷をした腎臓の長期機能評価を行ったところ、直後から正常機能(尿生成)を示し、またこの自家移植腎臓は2か月以上にわたり良好な移植腎機能を示した。更に、組織学的にも正常と同様の腎臓であることが示された。(2)一方、90MPaおよび126MPaの負荷をかけた腎臓は、糸球体は正常であるものの、尿細管は高度に障害された。この結果、自家移植した腎臓は血流が乏しく、高度の鬱血や出血、壊死所見を呈し、機能を示さなかった。以上の結果、腎臓は最大60MPa(-4℃前後)の圧に耐えることができること、また高圧を負荷した際の腎臓は特に尿細管が障害をうけることを明らかにした。 これは従来の冷蔵保存より約10℃の低温保存(エネルギー消費1/2)が可能であることを示すものであり、この条件によって保存期間(3-5日)を設けた移植実験を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は実験計画書に従い、腎臓における耐圧能評価を終了することができ、平成26年度の長期保存実験に円滑に移行することが可能な状況である。心臓に関しては、腎臓実験で行った手法をそのまま応用し、かつ腎臓の結果も参考にしつつ行うことが可能であることから、研究全体として順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
腎臓においては、平成25年度に得られた結果である60MPaに対する腎臓の耐圧性という結果に基づいて、どの程度の長時間にわたり、高圧・超低温保存(60MPa/-4℃)した臓器が移植後に正常機能を果たしうるかを評価し、高圧冷却臓器保存システムの有効性と条件の上限を明らかにし、移植医療の向上に結び付く新たな臓器保存方法の確立へと結びつける実験を行う。また臓器保存液については、平成25年度の実験結果から、腎臓の高圧・超低温下での長期保存にはUW液の方がETK液よりも優れる可能性が示唆されており、引き続き至適臓器保存液の解明実験を継続する。 特に臓器により圧や温度に対する特性が変わりうることから、平成25年度に行った腎臓実験の方法と結果に基づいて、平成26年度は、現在の臓器保存方法では虚血許容時間が最も短い心臓における超低温臓器保存法の開発を試みる実験に着手する。まずは、一時的な心臓の耐圧能を評価した後、最大耐圧能(=最低保存臓器保存温度)の基で心臓を長期保存し、それを腹部に異所性移植を行い、、移植心臓を血清トロポニンTやBNP、拍動触知、移植心埋めみ電極を用いた心電図により機能を評価し、術後2時間、2、7、14、28、42、63日に開放生検を行い、病理学的評価や浸潤細胞の評価、電顕による詳細な構造の評価を行う。なお保存液については、通常心臓移植で用いられるCelsior液の使用を基本とし、腎臓と同様に臓器保存液の差異が保存効果に関わるかについて評価を行う。
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